top of page

学びたいって何だろう?


『笑う化石の謎』(2017年)ピッパ・グッドハート著 千葉茂樹訳   佐竹美保絵 あすなろ書房

今日の一冊は、長男(中1:読書苦手男子)へのサンタさんセレクト本。

ああ、サンタさんすごく苦戦したんだろうなあ(笑)。我が家は、毎夏鉱物採集に出かけるので、少しでも興味に近いものと思ったんだろうなあ。「化石」とか「謎」とか、男子が喜びそうなキーワードですよね。ただ、時代背景は1850年代。読書が苦手な子は、階級社会だったり、宗教と科学の対立だったり、最初はこの世界に入っていくのに、少し時間がかかるかもしれません。でも、中盤からは、ググっと引き込まれます。

《『笑う化石の謎』あらすじ》

ケンブリッジ郊外のグランチェスター村に暮らすビルは、13歳。 こののどかな村の地下深くに良質な肥料「コプロライト」が眠っていることがわかり、村はにわかに活気づくが、それは同時に、思いもかけないできごとを引き起こし・・・・・・。 ビルは優等生ではないものの、するどい観察眼をもつ賢い少年。 失業の危機に陥った父を助けるために尽力するが、なかなかうまくいかず、病弱な母とのあいだに悲しい心の行き違いもあり、孤立していく。 そんな彼の前にあらわれた「笑う化石」。世紀の発見に違いないと確信したビルは、この化石をひそかに掘り出そうとするが・・・・・・。

出版社からのコメント

きびしい状況に屈することなく、すべてをかけて謎に挑むビルの姿が胸をうちます。 また、ぶつかりあいながらも、ピンチのときには手をさしのべ、よき相棒となる友人アルフの存在も印象的! 化石の謎だけでなく、全編をおもたい雲のようにおおう家族の秘密が少しずつ明かされていくのも、読者を飽きさせません。 19世紀後半に生きた、名もなき人々をいきいきと描いた物語です。

色々印象に残る場面はあるのですが、個人的に一番考えこんでしまったのは、母親の態度と学校という体制で勉強することについて。

ここに出てくる母親ね、まあヒドイんです。いわゆる毒親ではないのだけれど、小言の一つ一つが、チクリチクリと子どもの心を傷つけていく。妹夫婦とも縁を切ろうとするし、なんとまあ、プライドの高いいけ好かない人なんだろう、って感じなんですね。でも、最後のほうで、いかに私自身が表面に出てくる部分でしか、物事を判断できていなかったかを知らされるのです。深い思いゆえの空回り、焦り、期待するがゆえの失望。事情を知れば、母親のほうの気持ちも分かる気がしてきてしまう。

心に余裕のあるときはいいけれど、忙しくてイラついてるときは、私もこんな感じになっていないかな?そう自問して、ドキッ。

そして、学校。

主人公のビルは優等生でないどころか、学校をやめて、働きたくて働きたくてたまらないんですね。母親は学問は大事だと思っているけれど、机上の勉強がつまらない。

しかし、このビル、観察力&好奇心がスゴイんです!結局、学問の基本って、「知的好奇心」「観察力」「洞察力」なんじゃないかなあ。でも、学校の勉強って、ある程度みんなが同じスピードで学ぶことを強いられる。学びというより、勉めて強いる勉強。知的好奇心が湧き起る前に、詰め込んでしまう。うーん、待ってくれないんだな。

知りたいことが知れるって、内から沸き起こる、ゾクゾクする喜びなんですよね。それが、本来の学び。

そして、いつも思うのは本来の学び、ゾクゾクする喜びを知っている人(人格者の大学教授とか)ほど、肩書や身分、表面的なことで人を判断しないんですよね。知りたいと思う気持ちを持つ者は、もう同士なの。その姿に感動しました。

『笑う化石の謎』の前後で、こちらの2冊も読んでおくと、より理解が深まり、色々な事柄がつながって世界が広がる気がします!

『海辺の宝物』(レビューはコチラをクリック)は、実在した歴史的化石発見者メアリー・アニング(無学の少女)の物語。伝記なのだけれど、物語調なので、感情移入して読めます。

『アリスの見習い物語』(レビューはコチラをクリック)のほうは、当時の出産がどんな感じだったのか、より理解が深まって、面白くなるかと。

家族の秘密や、爽やかな友情物語としても楽しめる物語でした!

ブログ「今日の一冊」
part08.png
最新記事
カテゴリー
タグから検索
まだタグはありません。
アーカイブ
bottom of page