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ネトゲの救いと文学の救い


『ネトゲ中毒(NHKオトナヘノベル)』(2017年)

 鎌倉ましろ著 金の星社

1時間もかからないで、ラノベ感覚でサラッと読めます。

夏休みに親子で読んでもいいかなー、と思って下読み。

さてさて、ネトゲとはオンラインゲームのこと。

私自身は昔からゲーム(当時の名称はファミコン笑)に関心がなかったり、ゲームに偏見もいだいていたので、子どもがゲームをやることにいい顔してませんでした。子どもにDSも買ってあげなかった。

しかし、時はいつの間にかスマホの時代に移り、子どもはじいじのiPadを使って、勝手に色んな無料オンラインゲームをダウンロードし、マスターしていました。その能力、他で発揮してほしかった~(笑)。

いまでは、やっと私もゲームも悪いことばかりじゃない、と少し柔軟に考えられるようになってきました。

だって、気付いたんですよね。ゲーム自由にやらせてもらってる子でも、ちゃんと素直でいい子いっぱいいる。ゲームいっぱいやりつつ、他にも夢中になれるもの見つけていた。一方、規制したうちの子は……荒れていた!(←数年前の話です)

ゲームより何より、その子のことを信じてあげられず、親の価値観押し付けたほうが何倍も悪影響だった!!!もう、ホントにごめんなさい。そのとき、親の間違いに気づかせてくれた本が、これまた先日の思春期男子母会でもおススメされていた、『子どもを信じること』という本でした。こちらの本、ほんとーーーーーにおススメ!

さて、この『ネトゲ中毒』、これを読むと一時的な避難所としてネトゲに居場所ができることは悪いことではないと分かります。現実世界で居場所を見つけられない子は、ネトゲ上に救いを見出しているんですよね。誰でも必要とされたい、誰かの役に立つことで自分という存在を認めたいんです。

でも、大事なのは、小さなことでもいいから社会とのつながりを持つこと。リアルな人とつながりを持つこと。ネトゲ廃人で高校を中退した市村を訪問し続け、励まし続けた高校の先生、そして、ネトゲ廃人たちの受け皿を作ろうと、ネトゲハウスを立ち上げた市村には拍手を送りたくなりました!

そうなんです。ゲーム自体が悪いわけじゃないんですよね。問題はそこで何者かにはなれても、現実に戻ってこないこと。『行きて帰りし物語』になれていないことなんです。

これが、児童文学なら帰ってくる。『はてしない物語』がとても分かりやすい。ファンタジーの世界では何者かになれても、また何も変わっていない現実に必ず戻ってくるんですよね。そのとき、現実世界のほうは何も変わっていない。けど、自分の内面が変わっているんです。すると現実世界も変わり始める、動き始める。そこが、ゲームやラノベファンタジーとの違いかな。

文学におけるファンタジーの意義については、『ゲド戦記』などの作者ル・グウィンの書いたこちらの2冊『夜の言葉』(岩波書店)と『いまファンタジーにできること』(河出書房新社)が深いです!!

ただ……、居場所がない子たちにとって、児童文学はある意味キツイというか、いい気分のままで夢見させてくれないと感じるかもしれません。現実逃避させてくれるどころか、現実と向き合わなければいけないから。自分の中の見たくない闇とも対面するのが児童文学なんだなあ。

ゲームがない時代は、他に娯楽もないし、今みたいに習い事で忙しくもなかったから本に手が伸びたのかもしれないけれど……すぐに手に届くところに現実逃避がいっぱいある現代では、その文学の良さを伝えるのにもどかしさを感じます。

でも、キツイ分、現実の世界でも真の力ともなるからね、と伝えていきたいです。

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