top of page

中学生におススメの短編集


「ライトノベルとか自己啓発系の本は読むけれど、物語が苦手な中学生向きの短編がないか」

と聞かれたのでまとめてみようかと思います。

その子に合う本かどうかって、本当にワカラナイので、一つでも合うのが見つかったらラッキー!くらいな感じです。

ただ、その時響かなかったからといって、残念というわけではないんですよね。心のどこかに引っかかっていて、何年も経ってから響いてくることもある。

だから、結果は関係なく、種蒔きすることが大人の役割なのかな、なんて思っています。

今回ご紹介するのは、自らは手に取らないだろうなあと思われるものたち。

中高生が友だちから勧められて自ら手に取りそうなものは省きますね。

我が家の長男(中2)も、読書が苦手なのですが、苦手なのにプライドはあるんですね。字が多いとクラクラしてそれだけで読む気が失せるのに、小学校中学年向きっぽい本は「子どもっぽい」と言って嫌がる。文庫本なんかを渡すと大人っぽく感じて、読もうとします(笑)。では、どうぞ。

まずは、グリム童話集!

えー、幼稚園生が読み聞かせてもらうものなんじゃないの?という声が聞こえてきそうですが、侮るなかれ。

昔話の力って、本当にすごいんです!!これだけ長く語り継がれてきたんです、生き残って来たんです。

多分もうね、遺伝子が覚えている。「昔話は面白い!」って。

グリム童話のすごさは、以前コチラで書いたので、もしご興味があれば。受刑者や傷ついた兵士たちをも癒していくってすごいですよね。

ワンダー・ガアグ編、松岡享子さん訳の新訳も話題ですが、中学生にすすめるのなら、私はこの偕成社(全5巻)のが個人的におすすめです。原書挿絵のおどろおどろしい感じに触れてもらいたい。

ファージョンも短編が多いです。伝承による昔話ではなく、創作なのですが、それこそ年とったばあやに語ってもらっているような気分になってきます。『銀のシギ』『年とったばあやのお話かご』『ムギと王さま 本の小べや1』『天国を出ていく 本の小べや2』(全て石井桃子訳、岩波書店)など。

読書好きのJK(女子高校生)も寝る前は、ファージョンを読み聞かせてもらいたがるくらいです。個人的には、『天国を出ていく』に収められている「サン・フェアリー・アン」というお話が大好きです。

「世の中そんないいことばかりじゃない!」と素直で優しい物語に抵抗があるお年頃なら、イタリアの作家イタロ・カルヴィーノによるマルコヴァルドさんは面白いかも。日常の中の愉しみを見つけるもつかの間、哀愁漂う結末になってしまうユーモラスな物語。マルコヴァルドさんの生活が四季を通して描かれていますが、一話一話完結しています(岩波書店)。

今の子がこれ読んで面白いと思うのかなあ、と思っていたのですが、こちらもJKのお気に入りでした。

『チョコレート工場の秘密』で有名なロアルド・ダールは、子どもたちから絶大な支持を受けている作家さん。やんちゃな男子(うちの次男)もダールは大好き。子どもが大人をやっつける話が多かったり、言葉遣いが悪かったり、子どもたちが読むと否定されてない感じが嬉しくなっちゃうんでしょうね。クエンティンブレイクの絵もとっても合っています!ダールは短めでさらっと読める話が多いのですが、『奇才ヘンリー・シュガーの物語』(山本容子訳、評論社)は短編集。

同じくやんちゃ男子、それも思春期を描いた自伝的短編なら、スウェーデンを代表する現代作家ウルフ・スタルクの『うそつきの天才』(菱木晃子訳、小峰書店)。うそばっかりついてるスタルク少年、その文学の才能がいかにして開花していったか。問題児に見える子って、才能のかたまりだったりするんですよね。淡い恋なども描かれているので、字大きめで短いけれど、中学生向き。以前コチラでも詳しく書いているのでどうぞ。

同じく自伝的短編『恋のダンスステップ』『ガイコツになりたかったぼく』もおすすめです!

こちらは短編ではありませんが、個人的におすすめしたいのがラフィク・シャミの『片手いっぱいの星』(若林ひとみ訳、岩波書店)です。日記形式で一日一日の長さが短く書かれていて、読みやすい。

舞台は1960年代のシリア。時代も国も状況も全く違うけれど、厳しい状況の中で自分にできることを模索していく姿は、日本の子どもたちも励まされるのではないでしょうか?こういう子どもたちもいることも知ってもらいたい。

コナンなどが好きな子なら、モーリス・ルブランによる古典名作ルパンシリーズの中でも『七つの秘密』(南洋一郎訳、ポプラ社)は短編集なので、入りやすいです。シリーズの8巻目ですが、順番に読む必要なし。うちの次男(小5)はこの短編からルパンシリーズにハマり、読書は敬遠するほうなのに休み時間もずっと読んでいたくらいです。

日本の作家さんで、ふわっと不思議に包まれたいのなら安房直子さんの短編集。日常の延長線上のふっとしたファンタジーで、一見メルヘンチックでありながら、人間の悲しい性を描いているのが子ども騙しでない。

私自身は高校生のときに、お友だちにすすめられてその世界観に魅了されました。講談社、偕成社、ちくま文庫から文庫本で沢山出ているので、中学生以上は、そちらがおススメ。

ファンタジーではなく、もっと現実が舞台、でも幻想的な感性の世界がお好みなら、佐藤多佳子さんの『サマータイム』(新潮文庫)はいかがでしょう?中学生が主人公です。

お気に入りの一冊が見つかりますように。


ブログ「今日の一冊」
part08.png
最新記事
カテゴリー
タグから検索
まだタグはありません。
アーカイブ
bottom of page