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やっぱり家族って最強


『ミラクルズボーイズ』(2002年)

 ジャクリーン・ウッドソン作 さくまゆみこ訳 理論社

今日の一冊の舞台はニューヨークのハーレム街。

すべての人が肌の色や心情のいかんにかかわらず平等に暮らせるように、というキング牧師の夢。そんな夢の実現に貢献するような、アフリカ系アメリカ人の作家・画家の作品に与えられる賞、コレタ・スコット・キング賞を2001年に受賞した物語です。

小学校高学年から。

《『ミラクルズボーイズ』あらすじ》

両親を亡くしたプエルトリコ系黒人ミラクル家の3兄弟。父は人助けをしたため事故死、母親はその後糖尿病で亡くしている。長男のタイレー(22歳)は貧困地区においても大学に行けるほど優秀だったが、弟たちを養うために就職し、人格者のため聖タイレーとも呼ばれる。次男のチャーリー(15歳)は非行を繰り返し、刑務所から帰った後は人が変わってしまい、末弟のラファイエット(12歳)と話しもしなくなった。そんな兄弟3人の家族の物語。

物語は、末っ子ラファイエットの語りで進みます。ちょっとラファイエットが精神的に幼いようにも感じるのですが、まだまだ親の愛情が必要な時期に両親と死別していて、カウンセラーの先生にもかかってるんですよね。

12歳にしては幼い感じのラファイエットの語りだからこそ、難しい言葉や複雑な心理描写はナシ。それでも、そこには3兄弟それぞれの抱えた苦悩が描かれています。淡々と。各々抱えている葛藤はとても大きく、本当はものすごく悩み苦しんでいると思うんです。でも、踏み込みすぎていないところがいい。抑えた描き方だからこそ、どれほど苦しかっただろうと、こちらが思いを馳せられる気がします。

個人的に一番グッときたのは、やはり刑務所へ行って人が変わってしまった真ん中っ子のチャーリー。チャーリーが一番苦しんでいた。元々一番繊細&優しい心の持ち主で、寂しがり屋だったんですよね。刑務所行きになってしまう子って、こういう子多いと思うんです。チャーリーが罪を犯した理由、兄弟につらく当たる理由を知ったときは、もうね……涙、涙でした。

最後に母親と対面したときのチャーリーの姿は手錠姿。私も自分の母と最後に面と向かってしゃべった時は、ケンカだったので、チャーリーの気持ちがよく分かりました。せめて笑顔の記憶で終わりたかった。引きずるんですよねえ、これ……。

また、ラファイエットと同じく、私も冷たくなった母を最初に発見した人だったので、それも何年もの間トラウマでした。もうちょっと早く発見してれば助けられたんじゃないか、って。ミラクル家の母と同じく、うちの母も救急車の中で蘇生はしましたが、意識は戻ることなく、家の中で発見したときが私にとっては母の最期。魂が抜けた状態の人間って、本当に抜け殻なんだ、そして、光を失った身体の周りは吸い込まれそうなくらいの深い深い闇なんだ、とその時知りました。

そんなことを思い出したからか、昨晩は自分が死ぬ夢を見て面白かったなあ。幽体離脱っぽいの。こっちはいつも通りに話しかけてるのに、相手には見えない、聞こえない。ああ、四十九日まではこういう感覚で周りの人の間をウロチョロしてるのかあ、と夢だけど感覚は妙にリアルで、楽しい体験でした!死は終わりではなく、怖くなかった!

と、話が跳びましたが、兄弟だからこそ、許せなかったり、自分の一番嫌な部分を見せ合うことがある。とことん傷付け合うことがある。家族だからこそ、キレイごとじゃすまずに修復が難しく、でも家族だからこそ時間がかかっても修復できる。痛みと悲しみを伴いながらも、家族って愛おしいなあと思える、そんな物語です。

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