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適所に行けば開花する!


『グリーンフィンガー 約束の庭』(2009年)ポール・メイ作 

 シャーン・ベイリー絵 横山和江訳 さ・え・ら書房

週末は、海を臨む素晴らしいお庭のお宅にお邪魔したので、引き続き庭ものをご紹介。とおおっても素敵な家主の方は、私とは30歳以上年齢は離れているけれど、フェアトレードの話や児童文学の話に花が咲きました。お庭で取れたハーブティーをいただきながらの、豊かな時間。60代、70代って本当に楽しいわよ!とおっしゃられていて、よっしゃー、これからだわ!ってパワーいただきました。世代を超えて、楽しく話し合える児童文学って、やっぱり素敵。

さて、今回ご紹介するコチラの物語、庭が甦っていくのと並行して、少女の内面が成長していくさまは、あの名作古典『秘密の花園』を彷彿させます。

が、さすが(?)現代。問題は複雑です。ディスレクシア(識字障害)、学校の先生の対応問題、両親の離婚危機・・・。

【『グリーンフィンガー』あらすじ】

ロンドンから田舎へと引っ越して来たケイトの一家。古い家をDIYで改築することにワクワクしている父と、ロンドンでやりがいのある仕事を続けたい母の間には次第に溝ができてくる。一方、文字を読んだり書いたりするのが不得意なケイトは、学校が変わっても、やはり何も変わらないと、なげやりになっていた。しかし、「グリーンフィンガー(園芸が得意な人)」を持つウォルター老人との出会いによって、ケイトは自分も知らなかった才能に気づいていく。

個人的には、当初の夫婦喧嘩の理由がDIYの進み具合や、やってほしいことの優先順位の違いだったりするところが、我が家すぎて、夫と大爆笑でした(笑)。ただ、この夫婦の場合は、そのうち溝が深刻になってしまうのだけれど。

■ 学校って行かなきゃいけないもの?

実は、この一家が引っ越して来た理由は、パパが田舎暮らしに憧れているというのもあるのですが、一番の理由は、主人公ケイトの学校を変えたかったからなんですね。ケイトはおそらくディスレクシア(識字障害)で、文字が思うように読めないんです。その劣等感や、理解されない苛立ちから、結構前の学校では癇癪を起し、バイオレンスだったらしく・・・。

今度の学校は理解があるということで、転校したのに、まあ先生たちのヒドイこと。ヒドイというか、これが普通になっている世の中なんですよねえ。先生に反抗的な子は悪い子。コントロールしにくい子は、大人にとって都合が悪いですもんね。学校教育の在り方についても、色々と考えさせられます。

救いは、ケイトのパパは夫としてはダメダメかもしれないけれど、娘の教育に関しては見る目を持っていたこと。本当に先生たちの対応は、歯ぎしりするほど、くぅーーーーって感じだったけれど、ばしっと決めたパパはかっこよかったなあ。それから、ケイトはホームスクーリングという選択をするのです。自分の好きな庭の観察日記をつけるというところから、勉強を拡げる形で。

教育の形って、もっともっと選択肢があってもいいよなあ、って思わされます。

■ 適所に行けば、才能は開花する

大体、みんなが同じやり方で学んでいくという形式自体にムリがある。

でも、その型にはめようとしてしまう。はまることが「ちゃんとしていること」と大人も勘違いしてしまって、「がんばる」ことを約束させてしまう。

これね、他人事だと、色んなやり方あっていいんじゃない?と思えるのですが、いざ我が子が先生に反抗したら、とっさに「ちゃんとして」って思っちゃうんですよねえ(経験者は語る)。

問題児って一体なんなんでしょうね?合わないところにいて、合わないことをさせられるから暴れる。それは、自然なことなのかもしれません。

そんなケイトも庭仕事の才能を見出し、そこから勉強にもつながっていくんですね。興味のあることからつながっていく。「知りたい!」という熱意、それが学ぶことにつながるんだなあ、としみじみ。才能が開花していないとすれば、それはその子が悪いんじゃない。適所にいないだけ。

庭を新しく作るのではない、甦らせるというところも感動的ですので、ぜひ!

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