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生きづらくても生きて!


『レイさんといた夏』(2016年)安田夏菜著 講談社

今日の一冊はコチラ。

阪神・淡路大震災の日、23回目の1月17日に木かげdeえほんのうきょうさんが教えてくれた本です。

私ね、本当にお恥ずかしながら当時のことあまり覚えてないんです。関西出身の友だちもいなかったし、当時は大学生でテレビもない生活、当時はネットも見てなかったから、どこか遠いできごとのようで・・・。だから、いまさらだけど、読めてよかったです。

色んな複雑な思いが胸にこみあげてきて、もうね泣きながら読みました。

でも、いわゆる泣かせる本ではありません。震災のことを描いたというよりも、震災のこと‟も”描かれた物語。とても余韻の残る物語です。

《『レイさんといた夏』あらすじ》

東京の中学校で一学期だけを過ごし、兵庫県の西宮市に転校した莉緒は、“汚部屋”にこもりっきりの夏休みを過ごしていた。そんな折、莉緒の前に現れたのはヤンキー少女の幽霊。莉緒は彼女を成仏させるため、身元探しを手伝わされるはめになる。「生前、誰かと触れ合ったとき」のかすかな記憶を頼りに、レイさんが何者だったのかを突き止める、奇妙な夏休みが始まった―。期待の児童文学作家がお届けする、この夏、最っ高の出逢い!小学上級から。(BOOKデータベースより転載)

震災のような大災害のときって、あまりにも突然に死が訪れるので、死んだことに気付いていなくて成仏できない魂がたくさんあるって聞いたことがあります。3.11のときはタクシー運転手が多くの幽霊たちを乗せたということを卒論が話題になり、『呼び覚まされる 霊性の震災学』という本も出ましたね。オカルトとか、そういうのじゃないんです。『レイさんといた夏』を読むと、ほかにもたくさんのレイさんみたいに彷徨ってる魂がいるんだろうなあ、ということがごくごく自然に受け止められます。

学校や人間関係に息苦しさを感じている子どもたちに、ぜひ手渡したい。もちろん感じていない子にも。そしたら、息苦しさ感じている子どもの気持ちが手にとるように分かるから。

テーマは重いのですが、物語全体が重いわけではありません。ヤンキー幽霊のレイさんもいい味だしてますし、レイさんと莉緒の関係はときにユーモラスでもあり、読んでいて楽しいです。レイさんが誰なのか一緒に探すワクワクすらある。

個人的には、莉緒の母親にドキッ!でした。

私自身は、ここまで押しつけがましくないと思いたいけれど、自分とかぶったから。うちの長男が不登校だったとき、私も同じようなヒドイ言葉長男に投げつけたから。

いやね、落ち込んでたら、励ましたくなります。けれど、家で威張って暴君のようにふるまわれると、「あんたみたいの内弁慶っていうのよ!」ってつい言いたくなっちゃうんですよ。子どもの心に寄り添う・・・頭では分かってます。でも、表面的な言動にカーッとなっちゃっていた。悲しいかな、それが、私の現実でした。

正しい価値観で迫られるって、本当にウザったいということが、この物語を読むとよく分かります(反省・・・)。それでも、そんなお母さんをも最後はぎゅっと抱きしめたくなるような、人間って愛おしいなあって思わせてくれる物語。

読むことができてよかったです。うん、生きてるっていいよ。苦しいこと多いかもしれないけれど、五感で感じられるのって生きてるからできること。うきょうさん、ありがとう。

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