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スポーツに興味のない人にも


『オン・ザ・ライン』(2011年)朽木祥作 小学館

 2012年課題図書高等学校の部

YA(ヤングアダルトと呼ばれる中高生を対象とした本のジャンル)といえば、日本だと部活ものが主流。学校の人間関係以外に世界がないのかなあ、と思ってしまい、正直、学園ものは、個人的にはおなかいっぱいという気分になりがち。青春ものって、ちょっとクサくなりがちですしね。

そんな中、今日の一冊は、テニスの魅力そのものも伝えてくれる物語です。

《『オン・ザ・ライン』あらすじ》

テニス少年の底抜けに明るく切ない青春物語 ウルトラ体育会系だけれども活字中毒でもある文学少年、侃(カン)は、高校に入り、仲良くなった友だちに誘われて、テニス部に入ることになった。初めて手にするラケットだったが、あっという間にテニスの虜になり、仲間と一緒に熱中した。テニス三昧の明るく脳天気な高校生活がいつでも続くように思えたが……、ある日、取り返しのつかない事故が起きる。 少年たちは、自己を見つめ、自分の生き方を模索し始める。 「恐ろしいほどの感動が、俺を圧倒した。若く溌剌とした魂の輝きがもし目に見えるとすれば、朝の光の中できっと俺はそれを見たのだ。 瞬くように過ぎ去るからこそ、二度と戻れないからこそ、このきらめくような瞬間はかけがえのない一瞬だった。」(本文から) 少年たちのあつい友情と避けがたい人生の悲しみ。切ないほどにきらめく少年たちの日々の物語。 (出版社HPより転載)

力のある物語って、そのことに興味のない人までも、その世界にのめり込ませてくれるんですよね。

私は昔から、ほっんとーーーーーーーーーーーーーに運動が苦手でして。アレルギー並に嫌で、鑑賞する方も興味ゼロ。そんな私にもスポーツの魅力を伝えてくれる物語の力って、心底スゴイ!!!と思うのです。

もちろん描かれているのは複雑な人間模様なのですが、“それだけ”だと、なんか息が詰まっちゃうんですよね。なぜ彼らがテニスにあそこまで夢中になるのか。テニスの魅力が丁寧に描かれているから、運動音痴の私まで疑似体験できちゃう。

そういう意味では、『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子著 講談社)も面白かったです。書かれた当時の時代のしゃべり言葉を入れてるから、中途半端に古臭さを感じてしまう部分もあるのだけれど、取材力がすごい!!

こちらは、陸上部の話で、中学時代陸上部だった夫(あまり本読まない)は、感心して一気読みしていました。書かれている走り方が本当に参考になる、って会社帰りのランニングにも活かしているそうです(笑)。私もはじめて、走る爽快感を疑似体験できました。

『オンザライン』も『一瞬の風になれ』もどちらも、一瞬一瞬が輝きである青春を描いたもの。

人間関係のことだけだと、「ああ、そうそう分かる!」と共感はあれど、それだけでは世界はあまり広がらない。自分が興味なかったこと、苦手なことまでも楽しめる。違う視点が入る。そうすると、世界がぱっと開ける感じがするんですよね。自分の悩みの直接的な解決にはつながらないかもしれないけれど、開ける感じがする。

大人もまだまだ世界を広げられる。これだから読書はやめられません。

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