眠れる野性を掘り起こす
『最後のオオカミ』(2017年)マイケル・モーパーゴ作
はらるい訳 黒須高嶺絵 文研ブックランド
密かにニーズのある、本が苦手な子でも読めましたシリーズ(笑)。
うちの子たちは、文字読むのが苦手(面倒)なタイプなので、うちの子でも読めたシリーズは、本が苦手な子へ差し出す本の参考になります。ありがとう、息子たちよ(笑)。
ただ、自分で読むのは嫌でも、読み聞かせしてもらうのは好きなので、物語を聞くのが嫌いっていう人はいないんじゃないか、っていつも思います。
今日はそんなうちの次男坊(小4)が冬休みの読書の宿題で読んだ一冊。
短いです。字も大きく、大人なら30分もあれば読めちゃう内容。
《『最後のオオカミ』あらすじ》
孫娘からパソコンの使い方を教わったマイケル・マクロードは、インターネットで自分の家系を調べることにした。
やがて、遠い親戚からメールが届き、ひいひいひいひいひいおじいさんのロビー・マクロードがのこしたという遺言書を見せてもらう。それは「最後のオオカミ」と題された回想録で、むごい戦争の時代を、ともに孤児として生きぬいた少年とオオカミの物語だった。小学校中級から。2018年の課題図書。(BOOKデータベースより転載)
「わ、これアニメっぽい絵だ。じゃ、読もう♪」
ガクっっっ。
母の価値観に真っ向から対立してきてくれる次男(笑)。萌え絵まではいってないけれど、正統派児童文学のような固さはない感じが、手に取りやすいようです。基本課題図書には、毎年ガッカリするのですが、2018年はまあまあいいのが入ってるなあと思ったんでした(←何様)。
オオカミという響きは、自分の中に眠っている野性の何かを掘り起こしてくれるような気がするんです。
人肉も食べると信じられていた時代、オオカミは絶滅にまで追い込まれていました。ロビーが見つけた子どものオオカミは、スコットランド最後のオオカミの可能性が高く、ロビーは守り抜こうと決心します。ふさふさのオオカミの毛を刈り、チャーリーと名付け、大型の猟犬に見えるようにして。
孤児で、希望もないように見えたロビーでしが、ラッキーなことに、人格者の船長に見出してもらえます。そして、自由の地アメリカへ!
ところが、野性の動物は敏感。アメリカ行きの船に嵐が近づくと不気味な遠吠えをしてしまうのです。嵐を運んできたのは、ロビーとチャーリーのせいだ!二人を船から引きずりおろせ!と暴動がおこる寸前。戦争の時代は、普段はいい人であろう人々も保身に走り、いがみ合っていくのが、本当に怖い。
そんな中でも人格者というのはやはりいるんですね。そんなとき、最後まで辛抱強く聞いていた船長は、怒りに燃えてこう言うのです。
「恥を知りなさい。あなた方を今までかいかぶっていました。たいへん誤解していたようです。我々が逃げてきたのは、イギリス軍のように残酷になるためだったのですか?
オオカミであろうとなかろうと、チャーリーは我々人間と同じ、神の創造物です。だれにも危害をくわえていないではありませんか。……(中略)……彼らをロングボートですてろと言うなら、どうぞ私もすてなさい。恥知らずな人たちといるぐらいなら、彼らと死んだほうがましです。」(P.72-73)
はあああ、スッキリ!!!船長ありがとう!
こうして、ロビーはアメリカの新天地でまた、人生を切り開いていくのですが、ロビーを野性に返す決心をします。そして、野性に戻した後の再会場面。手をのばしてなでたくなるけれど、人間のにおいをつけられるのは迷惑かもしれない、とグッとロビーが我慢するシーンには、思わず涙。
「お母さん、この話、意外といいよ。お母さんも読むといいよ」
と次男。そうですか、意外と(笑)よかったですか。自分から色々感想を言ってきてくれました。
最近、野性のオオカミが復活してきているんだとか。それによって、どう生態系が変わっていくのかなどが書かれている本がたくさんあり、思わず本屋のオオカミコーナーに入り浸ってしまいました。こういう物語をきっかけに、自分や子どもたちの中の野性を刺激できたらなあ。大人が読むには物足りないのですが、関連する本が読みたくなる、次につながるきっかけとなる物語かもしれません。