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クリスマスの奇跡


『クリスマスの猫』(1994年)ロバート・ウェストール作 

ジョン・ロレンス絵 坂崎麻子訳 徳間書店

12月は、忙しないけれど、クリスマスがあるからやっぱり好きです。

あ、好きなのは、にぎやかな商業主義のクリスマスの方ではなく、静かな時間の流れのほう。

今日の一冊は、イギリス児童文学を代表する作家で、ロバート・ウェストールによる、クリスマスの奇跡の物語。心温まります✨

《『クリスマスの猫』あらすじ》

一九三四年のクリスマス、上流階級育ちの十一歳のキャロラインは、おじさんの家にあずけられていた。おじさんはやさしいけれど気弱で、性悪な家政婦のいいなり。家は寒く外出は禁じられ、友だちといえば、庭で見つけた身重の猫と、高い塀をこえて現れた町の少年ボビーだけ。キャロラインとボビーは力をあわせ、猫を守ろうとするが…。イギリス児童文学の実力派作家ウェストールが、おばあさんが孫娘に語るという形式で描く、育ちがよく気が強い女の子と貧しいけれど誇り高い男の子の、忘れられないクリスマスの物語。小学校中・高学年から。

(BOOKデータベースより転載)

物語は1934年。階級の差も激しく、労働者階級は厳しい貧困にあった時代です。宗教や社会的な背景など、本に慣れていない子には、最初は少し読みづらいかも。でも、短い物語ですし、こういう物語にぜひ触れてもらいたいなあ。入り口だけ一緒に行ってあげれば、読めるんじゃないかしら、と思っています。

上流階級の主人公の女の子の勝気なところは痛快ですし、労働者階級ボビーの魅力的なこと。誇り高いし、行動力はあるし。これは、惚れますわ。

勧善懲悪なのがちょっと…という人もいるようで、私自身も勧善懲悪は苦手なのですが、この物語に関して言えば、痛快でした。この短さだからなのでしょうか。なぜこの物語では、ちょっとと感じなかったのか、自分の中でつきつめてみたいと思います。

さて、この物語では、労働者階級の厳しい状況や、忍び寄る戦争の影(現状を打破するために、むしろ労働者階級は戦争を歓迎している様子)など、暗い現実が描かれています。でもね、暖炉の火はあかあかと燃えてあたたかいし、家族のつながりのあったかさは、他人行儀な上流階級よりも、労働者階級の人たちのほうがあるんだなあ。寒いし、暗いからこそ、人のあたたかさが、つながりがジンと来る。

クリスマスの奇跡の場面は…私も、キャロラインと一緒に言葉を失い、その美しい光景に胸がいっぱいになって、思わず涙してしまいました。

でも、これ、キリスト教に馴染みのない人が読んだら、どんな風にうつるんでしょう?私自身はキリスト教の環境で育ってきたので、自分自身の幼き日の思い出と重なり、感動してしてしまうのですが。よく分からないなりにも、美しいものは伝わるのかしら。聞いてみたいです。

暗いからこそ小さな光がまぶしい、そして何とも言えない余韻の残る、素敵な物語でした。

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