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最強のおばかさんたち

『おばかさんに乾杯!』(2003年)ウルフ・スタルク作 石井登志子訳 小峰書店

『転校生レンカ』(紹介記事はコチラをクリック)に続き、こちらも引っ越しがテーマの児童文学。1992年に福武書店から出され、その後小峰書店で復刊。

が、小峰書店のほうも、もう絶版のよう・・・。ホントに、すぐ絶版にしちゃうんだから。プンプン!

作者のスタルクといえば、現代スウェーデンを代表する児童文学作家で、『シロクマたちのダンス』(以前の紹介記事はコチラをクリック)や、『おじいちゃんの口笛』なんかも有名。

この『おばかさんに乾杯』では、主役のおばかさんファミリーがもうおかしくて。

ママは忘れっぽくて、おっちょこちょいの芸術家。その父であり主人公の祖父は、すんごい格好で、病院から脱走してくる頑固者。11歳の主人公のシモーネにおいては、フランス系の名前になじみのない先生がシモン(男の子の名前)と間違えたため、そのまま男子生徒になりすますという強心の持ち主!なりきったとたん、喧嘩っぱやくなるとか面白すぎ~。

ママが自分の恋人(シモーネは大っきらい)のところに引っ越すのを機に、シモーネの環境はガラっと変わります。

このママ、すごい。子どもに対して罪悪感持たずに開き直ってる、というより自分の選択に自信を持っている。かといって、自己中心な母でもなく、なかなかいいお母さんなのです。おっちょこちょいで、娘が男子生徒に扮してることに全然気づかないとことかもスゴイけれどね。一本筋が通ってるから認められるんだな。

リアリティがあるか、って聞かれたら、こんな破天荒な家族、めったにいないだろうけれど、物語だからこその面白さがある。

客観的に見たら、シモーネの状況はみじめだし、深刻なのかも。でも、カラっと笑い飛ばす底力のようなものがこの物語にはあるんです。シモーネのように自分をしっかり持った子の話を読むと、スカっとするんだな。おじいちゃんも、いい味出してる。ここに出てくる人たちは、おばかさんかもしれないけれど、浅はかとも違う。シモーネの揺れ動く繊細な心理もちゃあんと描いています。男子ならではの友情の結び方もいいなあ。

しかし、スウェーデンって国は早熟だなーってどの物語読んでいても思う。性的に日本より進んでるというか。

なので、ちょっと親が読むとドキっとするようなこともさらりと書かれています。まあ、女の子だったら読み飛ばせるんじゃないかな~。アホ男子はそういうとこに、でへへ、って引っかかるかもしれませんが(笑)。

もし、「私ってなんて不幸なんだ」と思ってる子がいたら、シモーネの生き方にふれるのもいいかもしれません。

サクサク読めるので、本が苦手な子にもおすすめ。小学校高学年から読めるけれど、共感できるのは中学生以上かなあ。

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