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海外翻訳本が苦手な子にも


『茶畑のジャヤ』(2015年)中川なをみ作 門内ユキエ絵

 鈴木出版 全国学校図書館協議会選定図書

(うん、いかにも大人が子どもに勧めたそうな話だ 笑)

先日ご紹介した『さよなら、スパイダーマン』の主人公は、異文化、異質なものに出会うことによって、新しく目が開かれていくわけなのですが、実は海外の翻訳文学は苦手って人も少なくないんですよね。

私個人は、幼い頃から異文化への憧れが強かったので、知らないモノ(特に食べ物!)を妄想してはワクワクしていたのですが、イメージできないものには共感できない、感情移入しづらい、という意見を聞いて、ナルホドなあ、と。

異文化に出会いたいけれど、海外翻訳文学は苦手という方におすすめなのが、今日の一冊。

いわゆる優等生ゆえに、クラスの子たちとうまく行かず、学校から逃げ出したい主人公の周。そんな風に思っていたところ、スリランカに仕事で時々滞在しているおじいちゃんから、一緒に行かないかとの誘いを受け、思い切って行くことに。

最初は不潔で嫌だと思った建物、食べ物。

ルーズに思えてどうなの?と思った現地の人々。

セナの娘ジャヤと出会うことによって、だんだんと見る目が変わっていく成長物語。

■ 違いは悪くない!

この物語は、日本人には想像しがたい民族間の抗争についても考えさせられます。

戦争の語り部でもあるセナから、26年間続いたタミル人VSシンハラ人の内戦の話を聞いて驚く周。だって、死者7万人以上も出したこの内戦が終結したのは、2009年。そんな昔の話じゃないんです。

外国人である自分にはみな親切なのに、自国内でタミル人とシンハラ人はお互いに悪口を言い合っている。ちょっと人間不信になりそうかも・・・!?

で、実はジャヤの両親はタミル人とシンハラ人が結婚した非常に珍しいケース。

ロミオとジュリエット的な?

タミル人はヒンドゥー教、シンハラ人は仏教と宗教も違うからややこしい。

でも、ジャヤはこう言います。

「おいのり、ちがう。カミサマ、ちがう。こまることある。でも、どちらもだいじって、母さんいった。ちがうこと、悪くないし、ちがうこと、きらったら、だめ。いちばん悪いって、いつも父さんがいう。わたしもそう思う。人はみんなちがう」(P.149)

そうそう、違いは悪くないの!

そして、ジャヤは、

「たくさん想像できる人は、人を殺さない。悲しみが想像できるから」(P.109)

と言うのです。想像力とは、物事を一面からでなく、多面的に見れること。

響くなあ。

■ 人が太刀打ちできない世界を知る大切さ

ジャヤとの出会いによって、どんどん目が開かれていく周ですが、中でも

「一人でもOKだけれど、みんなと一緒だったらハッピーになれる。」

というジャヤの言葉に目の前のモヤが晴れて行くような気持ちになるんです。

一人でも別にいいんだ

これは周にとっては、新鮮な考え方だった。

一人でいることがただ不安、あの子一人なんだと見られることが嫌。人からどう思われるかを気にしていて、一人が寂しいと感じる余裕もなかった、と周は気づくのです。

すごいよ!小学生でそれに気づけるなんて!

大人だって、自分の感情と向き合うことなく、ただ人からどう見られるかで不安になってる人いかに多いことか。

一人でも別にいい。でも、みんなと一緒だともっと楽しいこともある。

そう思えたら強いよね。

そんなとき、人が太刀打ちできない自然の世界があることを知るって、とっても大切な気がします。

無力だと知ること。それは、呆然とするとともに、ちっぽけな自分も宇宙の一部なんだというつながりをも同時に感じることだと思うんですよね。

周はそれを、海辺のリゾート、ミリッサで波と格闘することで気付くのです。

この場面よかったなあ。

小学校高学年からおすすめです。

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