人それぞれに物語あり
『ぐるぐるの図書館』(2016年)
工藤純子・廣嶋玲子・濱野京子・菅野雪虫・まはら三桃 講談社
今日の一冊は小5女子からのおすすめ。
先日図書館で、偶然あった次男のクラスメートの女の子が、次男用に選書してくれたうちの一冊です。小5女子による選書だなんて、もうもう、かわいくてトキメキました!私が(笑)。
「不思議な感じがして、なんか好きだったー」
って言って、選んでくれたのが、こちら。
《『ぐるぐるの図書館』あらすじ》
舞台は、十々年(ととね)小学校の図書室。 なにかの原因で、もやもやっとした気持ちを抱えている小学5年生たちが、彼らにだけ見える貼り紙に誘われて図書室に入ってみると、不思議な司書から、不思議な本と出会うきっかけを渡され、それぞれのラビリンスに迷い込んでしまう――。 児童文学のトップランナー5人が、ひとつのテーマ、「図書室」に挑んだ競作リレー小説、ここに完成!(講談社ホームページより転載)
同じ小学校、同じ不思議な司書さんだけ共通していて、あとは5人の別の作家さんが書いてるんですね。でも、前のストーリーで主人公だった子が、次のお話にもクラスメートとして登場したり、とどこかでわずかに重なり合ってる世界が面白い。
ひこ田中さんが、何かの講演会のときに、「本好きの子だけじゃなくて、本が苦手な子にも手渡せるような本も必要。そういう意味で、『ぐるぐるの図書館』は面白い試み」のようなことをおっしゃっていたんですよね。
本って、開く前から表紙を見ただけで、ワクワクしたり、ゾクッとしたり、読む前から何か“予感”のようなものが働いて、それも好きなんです。厚みや重みからにじみ出てくるもの、それって、デジタルだと味わえない感覚なんだなあ。
とても読みやすかったです。本が苦手な子が、「もしかしたら、本って面白いのかもしれない」、と思うきっかけになれるような本。なんとなくでも、図書室ってもしかして魅力的なのかも、と思ってもらえそう。
「木の葉は土に還るもの。言の葉も同じです。これはもう、多くの人の中に、肥となって糧となって消えた本。朽ちて形もなくなって、読んだことすら覚えていない人もいるでしょうが、損の人たちの言の葉の中に、生まれ変わっているのです」(P.158)
これは、物語の中で、廃棄図書の中にあった新美南吉作の『久助くんの話』のページがはがれ落ちても、直そうとしなかった不思議な司書さんの言葉。時代と共に消えていってしまう物語たち。ああ、言の葉も土に還るんだな、としっくりきました。
最後に、著者5人による座談会が掲載されているのですが、それも興味深かったです。濱野さんが、
「本や読まなきゃいけないものではなく、読まなくても生きていけます」
「それでも読書をしないのは、もったいない」(P.232)
とおっしゃっていますが、同感!本じゃなくったって、その子、人が夢中になる世界があれば何だっていいんです。スポーツでも、音楽でも、何でも。本は押し付けるものではないけれど、それでもやっぱり、この世界の広がりを知らないのは「もったいないよー」と私も言いたい。誰かが必要としてるときに、さりげなく、すっと差し出せたらよいなあ、と思いながら、本の紹介を続けています。
さて、こちらの物語、姉妹編(?)として同じ5人の作家さんによる『ぎりぎりの本屋さん』も出ているので、そちらも読んでみたいです。