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自然の中へ飛び出そう!


『灰色の小人たちと川の冒険』(1995年)

 BB作 神鳥統訳 D.J.ワトキンス=ピッチフォード画 大日本図書

今回小人テーマでたくさん読んできたのですが、さもありなんという感じなのですが、やっぱり絶版のものが多いんですよねえ。

でも!!!児童文学においては、絶版の中にも名作が紛れ込んでいるから、要注意なのですよー。

そして、今日の一冊もそんな紛れ込んでいた一冊でした。こういう隠れた名作に出会わせてくれるんですから、もうホントに図書館さまさまです!

《『灰色の小人たちと川の冒険』あらすじ》

イギリス最後のノームの生き残り、スニーズ、ボルドー、ドダーは、行方不明になっている兄クロードを探しに、ボートで川をくだり、旅に出ます。厳しい自然とたたかいながら、動物たちに助けられ、3人は旅を続けるのですが、途中でさまざまな困難に出会います。

1943年カーネギー賞受賞

最初の1ページ読んで、あ、この物語きっと好き!って、もう嬉しくなっちゃいました。

ただ、とにかく細かい自然描写が続くので、いわゆる刺激的で早いストーリー展開に慣れている子には、合わないかもしれません。

あとがきにも書かれていたのですが、児童文学者のマージョリー・フィッシャーは、Bookbird誌67年3号の中で、BBについて、ミツバチのような複眼をそなえているのではないかと思わせるほど、と述べているのですが、まさに!

この物語を読んでいると、自分も小人サイズになって、土の匂いや風、川の流れる音が聞こえてくるかのようなんです。それが、もうもう素晴らしい体験で。

ミクロの世界を隅々まで堪能できて、厳しいけれど自然と共にある幸せを、しみじみと噛みしめることができるんです。

特に素晴らしかったのが、森の動物たち住民集会へのパンの神登場の場面。パンの神登場の場面というと、ケネス・グレアムの『たのしい川べ』が有名ですが、灰色の小人のほうも圧巻ですよ~。神聖で、敬虔な気持ちを呼び起こされます。

ただ、それが素晴らしかっただけに、パンの神の下した決断は、個人的には非常に残念でした。ネタバレになるのでどういう決断なのかは書きませんが、他の方法があったような気がして……。裁きを下す西欧的だなあ、って。その箇所だけが引っかかりました。読んだ方、この箇所どう思ったかお聞きしたいなあ。

ちなみに、あとがきに書かれていたのですが、作者のBBがこのような優れた自然観察眼を持つに至ったのは、病気のため普通の学校教育はうけず、自然の中に暮らしながら家庭で基礎教育を受けたことが影響しているそうです。学校より自然から学ぶことのほうが本来、多いんですよね。

そして、深く頷いてしまったのは、ラグビー校で16年美術教師をしてきた上での以下の言葉↓

「教師というのはわたしにはいやな職業だった。一日中監督されながら授業をうけなければならない子どもたちが気の毒でならなかったし、時間ができ、やっと書きだそうとするころには、せっかく湧きあがっていたインスピレーションがすっかり涸れ尽きているのだから」

本当の学びって、教室の中にはない気がします。もっともっと自然の中へ飛び出そう!学びのフィールドへ。

自然の申し子のようなBBによる灰色の小人の物語。続編もあるそうなので、楽しみです!

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