top of page

時空を超えて恋をする


『カモ少年と謎のペンフレンド』(2007年)ダニエル・ペナック作  中井珠子訳 白水Uブックス

今日の一冊は、時にユーモラスに、時にゾクゾクっとするような謎を含みながら、文学の楽しみを教えてくれる一冊。本が苦手な子にもおすすめしたいなあ。

文庫本なので、中学生が読んでいても、なんとなく恥ずかしくない。でも、字はかなり大きめなので、本が苦手な子はホッとするかも(笑)。1時間くらいでさらっと読めちゃいます。

《『カモ少年と謎のペンフレンド』あらすじ》

ぼくの親友で英語嫌いのカモは、パリに住む中学生。ある日、かあさんとの賭けに負けて三か月で英語をマスターすると約束し、いやいやイギリス人少女キャシーと文通を始める。  最初はまるでやる気がなかったカモも、文通にのめりこみ、どんどん英語が上達する。やがてカモはふさぎこみ、誰とも口をきかなくなる。キャシーに恋しているのだ。  しかし、カモのペンフレンドはどう考えても普通の女の子ではない。書いてくることが異常だ。真相解明のため、ぼくはペンフレンド紹介所に侵入する。そして驚くべき事実を発見する......。フランスの少年少女に大人気の愉快な物語。(出版社紹介文より)

カモ少年って、鳥のカモかと思ったら、フランス人の少年の名前なんですね。

ペンフレンドの謎は、読書好きな方なら、すぐに分かるかも。

Why canst thou not always be a good ass, Cathy?

と文通に書かれた英語の原文がわざわざ書かれてたのですが、canstとかthou(youの古い言い方)になっているのを見て、ん????と。

さらに、キャシーの家族の名前を見て、キャシーが誰なのか分かって、ゾクッ!としました。そして、すごーく嬉しかった。このキャシーは私の大好きなキャシーで、こんなところで再会できると思ってなかったから。このキャシーを知らない人にとっては、それはそれで、新しい出会いで、やっぱりワクワクぞくぞくすると思うんです。

ネタバレになるので、あまり色々書けないのですが、私もこの多言語ペンフレンド紹介所バベル社に勤めたーい。

今は、SNSで簡単に世界とつながれますが、手紙の質感って全然違いますよね。私自身は、中学生のときに初めて海外にペンフレンドを持ったのですが、先方から来たオニオンスキンペーパーと呼ばれるペラペラの便箋に、すごくときめいたものでした。日本みたいに素敵な便箋じゃないのに、ああ外国っていう質感。文字もね、ネイティブの人は筆記体使わないんだ、中高生は丸文字なんだ、とかそういうのも面白かった。画面上にはあらわれない、その人らしさがにじみ出るんですよね、手紙って。

最後に、ぼく(カモ少年の親友)がお母さんに「恋をしてるっていったいどんなことなの?」と聞いたときのお母さんの回答が、なんかいいなあと思ったのでご紹介。

「恋をするって?ほんとに恋をするって?それはね、だれかに、いっしょに暮らしていけるくらいたくさん、話したいことがあるってことよ。だまっているときにもね」(P.94)

だまっているときにもね、っていうところが好きでした。

ああ、私も手紙が書きたい!というわけで、先日会ったばかりだけれど、寮生活を送る中1長男に手紙を書きました。

今月最後の日、28日のzoomでオンラインおしゃべり会のテーマは『手紙』。ぜひ初めましての方もお気軽にご参加くださいね。(詳細は一つ前の記事参照)

ブログ「今日の一冊」
part08.png
最新記事
カテゴリー
タグから検索
まだタグはありません。
アーカイブ
bottom of page