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他人軸で生きてる子へ


『ハーブガーデン』(2009年)草野たき作 北見葉胡絵 岩崎書店

今日の一冊は、現代っ子が抱えがちな心の苦しさを描いたこちら。読みやすいので、本が苦手な子にも。

庭がテーマのものでは、庭に癒されたり、庭から教えられるわけではないというところが、他のものとは一線を画すかな。

【『ハーブガーデン』あらすじ】

「子どもなんて仕事の邪魔でしかない」

電話口での母親の言葉を立ち聞きした由美は、お母さんに嫌われないように自分の気持ちを言わないでいた。けれど、心の中は寂しかった。そんなとき、あこがれのモデルにそっくりな中学生と出会う。彼女が誘ってくれたのは、ハーブガーデンだった。(BOOKデータベースよりそのまま転載)

北見葉胡さんの表紙絵が目を引きます。個人的には、言葉を飲み込む主人公に、ちょっとイラっとしながら読みました(笑)。自分の気持ちを偽って生きてると、人ってどこかで爆発しちゃうんだな。

主人公由美の母親は、ワーキングマザー。仕事にやりがいを感じていて、でも、きちんと夕飯を作って、一緒に食べるため、どうしても食べる時間が遅く、十時近くになってしまう。そこまで待てないから、当然塾の前に間食もするから、由美は小太りになってしまうんですね。それがコンプレックス。本当はそんな遅くに食べたくないって思うけれど、言えない。お母さんがその時間を、とても大事にしていることを知ってるから。

そんな感じで、本当はおさがり着たくない、本当は習い事も別なことしたい、お母さんに家にいてほしいetc.etc.言えず、ニコニコしてお母さんの言うことに合わせちゃう。な、なんていい子・・・。私自身は、親に言いたい放題言って育ってきたので、こういう遠慮する気持ちってワカラナイのだけれど、今はこういう子、多いのかもしれない。いい子というか、由美は母親に見限られるのがこわいんです。お母さんをやめられるのが・・・。

え!?どうしましょう。私平気でキレて言っちゃってる。

「もう、うんざり!お母さんはお母さんをやめてやるぅ~~!」

って。嗚呼、未熟な大人。

でも、考えようによっては、いいのかな?そんな脅しもどこ吹く風で、あれやだこれやだ、こうしたいああしたい、言い多放題言ってくる我が家の子どもたち。もう家出しちゃう、と言ってみても、

「そんなこと言って、お母さん本当は(子どものこと)大好きなんでしょ。どうせ図書館行くだけで、すぐ帰ってくるんでしょ。あ、(外出)ついでにバナナ買ってきて」

なんて、あちらのほうが上手ですからね(笑)。

女子特有の友だち関係も読んでいて、とってももどかしくなります。ああ、他人軸。人に合わせていく感じ、自分はないのかい!って言いたくなっちゃう。自分の気持ち分かってほしい、ばかりで、自分が一番自身の気持ちを見つめていなかったりする。でも、ほとんどの子がこういう感じなんだろうし、自分も昔はこういうところもあったのかな。主人公の由美は、最後にはちゃあんとそれに気づきます。

「だって、花や草や木がどんなにすばらしくても、ひとにはかなわないもの」(P.175)

とハーブガーデンのカフェオーナーすみれさんは言います。庭に癒されてたわけではなかった由美だったけれど、自分の気持ちに素直になったとき、はじめて庭のハーブたちに助けられたと感じるのです。

現実には、由美の母親のように理解のある親ばかりじゃない。憧れの友だち花蓮ちゃんみたいに、うまく分かり合える友だちばかりじゃない。けれど、あ、こんな風に自分の気持ちを押し込めてるのは私だけじゃなかったんだ、と思う子がいれば、この本は助けになるのかもしれません。

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