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これぞ職人技!


『幸子の庭』(2007年)本多明作 小峰書店

今日の一冊は、植木職人さんの魅力が詰まったコチラ。

すみません、実はあまり期待せずに読み始めました。だってね、一文目が、

「眠いなあ~」

だったんですもの。私が古い人間なのか、どうもこの「~」と伸ばして書かれるのが苦手なのです(自分はよく書きますが)。

ところが、ところが!これは人にオススメしたくなる物語でした。会話文も多めなので、さらさらと読みやすい(本が苦手な子でも読めそう!)のですが、内容は骨太です。

《『幸子の庭』あらすじ》

親友が転校してしまったことがきっかけで、学校で居場所をなくしてしまった幸子。なんとなく家にいる日々が続いていたある日、九州から曾おばあちゃんが訪ねてくることになり、お母さんはパニック状態で大騒ぎ。曾おばあちゃんが大事にしていた庭が、荒れ放題でお化け屋敷状態になっていたのだ。何とか見つけてきた職人さんは、昔気質の素晴らしい職人さんたちだった。庭が手入れされていくのに従い、幸子の心の中にも爽やかな風が流れ始めた。

日本児童文学者協会第5回長編児童文学新人賞受賞 ・産経児童出版文化賞受賞

幸子たちが今住んでいるうちは、元は曾おばあちゃんが嫁入りで来て、最初に住んだ思い出のおうちだったんですね。なんと260坪の土地のほとんどが庭という!そりゃ、手入れ大変です。

和風の庭園と、イギリス式のガーデン、どちらが好きかと聞かれれば正直言って、私はイギリス式を眺めていたい派。和風のお庭って暗いイメージもあって、そんな家に住みたいと思ったこともありませんでした。

でもねえ、この物語読んだ後は、庭を見る目が変わってしまうんです!四季折々考え抜かれた和の魅力もなんと奥ゆかしいこと。うん、住んでみたい(←単純 笑)。

こんな風にガラリと印象を変えてしまうのだから、物語の力ってスゴイです。

そして、なんといっても、ここに描かれている職人さんたちの仕事ぶりが、本当にほれぼれするんです!プロ、これぞプロなんです!そこへ、職人のうちの一人である田坂健二と鍛冶職人だった祖父銀二の物語も挿入されていて、それが物語に厚みと深みを出していて、よかったなあ。今でもパチンパチンと剪定の音が聞こえてくるかのようです。

ところで、主人公の幸子。職人の田坂と交流し、整っていく庭を見ていくうちに自身も回復していくのですが、そうなの、そうなの、って思いました。不登校とか引きこもりになると、内面だけと向き合いがちだけれど、そうするとそこから抜け出せないんですよね。別の世界を見る。そうすると、ふっと風が吹き抜けるんですよね。風穴を開けてくれるのは、直接的なものじゃない気がする。

もう一つ、この物語の隠れた主役は、木鋏などの道具。道具たちにも命が吹き込まれていて、この物語、男の子も好きだと思います。だからこそ、個人的には、タイトルと表紙が残念でした。

北見隆さんの装画自体は、とーっても素敵なんです。でも、アンリ・ルソーを彷彿とさせて、和風の庭というよりもジャングルみたいなイメージになってしまっている気がして。

また、物語の中心も確かに幸子ではあるのですが、これは植木屋の職人田坂健二とその祖父銀二の物語でもあり、庭は幸子のというよりも曾おじいちゃんとおばあちゃんの庭。幸子の、というより受け継がれていくイメージなんですよね……。どういうタイトルだったらよかったのだろう、と考え続けています(笑)。

心地良い剪定のリズムが耳から離れない、余韻のある物語でした。

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