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悪気がなければ、なりすましはOK?


『エドウィナからの手紙』(2003年)スーザン・ボナーズ作 

 ナカムラユキ画 もきかずこ訳 金の星社

今日の一冊は、“なりすまし”についても、ちょっと考えてもらいたい一冊。2004年度の中学生の部課題図書。

《『エドヴィナからの手紙』あらすじ》

公園のこわれたブランコが何ヶ月も放置されていることに気づいたエドウィナは、同じ名前の大・大おば様をよそおって市長に抗議の手紙を書くことに。ひとりの少女が街に起こした新しい風! 社会に関心を向けさせる作品。(MARCデータベースより転載)

主人公のエドウィナは、ようは大・大おば様の“なりすまし”になるんです。善意からだし、正義感からなのですが。でも、正しいことのためだったら、なりすましになってもいいの?と考える良いきっかけになるかも。

実は、先日、中1長男がなりすましプチトラブルに巻き込まれそうになったんです。そうに、っていうのは私が事前に阻止してしまったから。

色んな偶然が重なって、長男宛てにきたLINEを目にしてしまったのですが、悩みに悩んだ末、先生に相談して、長男の目に入る前にそのメッセージを削除してしまいました。あまりにもヒドいメッセージだったから。

要は、仲良しの先輩からギョッとするような、親からすると許しがたい内容のメッセージが送られてきて、私が動転してしまったのですが、真相は仲良しの同級生による“なりすまし”のいたずらでした。相手が仲良しだったから、イジメとかじゃなくて、ふざけてただけと分かって、ホッとしたんですけどね。でもそのメッセージは、その先輩との関係性を変えてしまような内容だったんです。パスワード教え、スマホ貸し出した先輩にも落ち度はあるかもしれないけれど、その先輩だって傷ついたかもしれない。

こういう言動を取ったら、相手はどう思うだろう?一瞬立ち止まって考えられる時間がない子が増えてきている気がします。深く考えずに、パッと送信しちゃう。削除したら証拠も残らない。軽く考えすぎ(いや、考えてもいないのか)。

さて、同じく“なりすまし”になってしまった、この物語の主人公の心情はいかに?

実は、主人公のエドウィナの大・大おば様は地元の資産家でした。だから、発言権が大きいんですね。それを利用して、エドウィナは町で改善してもらいたい点を、おば様のサインを真似て、市長宛に手紙を出すのですが、だんだん心がチクチクしてくるんです。良いことをしてる、結果も良い方向にいってる……だけど、うしろめたい。例え悪気はなかったとしても、やっぱり、だますって気持ちのいいものじゃないんです。

大・大おば様は真相を知って、怒りはしませんでした。でも、きちんと何がいけなかったかを説明してくれるのです。あらかじめ断ってくれたら、喜んで賛成したのに、って。そして、エドウィナにやり直すチャンスをくれるんですね。

文体は軽いし(大人なら1時間くらいで読めちゃいます)、ストーリーはうまく行きすぎるし、長男のプチトラブルがなければ、ユーモラスな子ども向けの物語、くらいにしかとらえなかったかも。でも、トラブルのあとだと、こういう物語読んでいたら、悪気はなくても、人をだますとどういう心境になるのか、ということが分かるのではないかな、と思わずにはいられませんでした。

ちなみに、大・大おば様と同じく、長男の先生も、彼らの失敗を怒るというより、“学びの機会”に変えてくださいました。素晴らしい(感涙)。

失敗は悪いことじゃない。それを見守り、学びの機会に変えられる大人に、私たちもなりたいものです。

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