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短編が読みたくなったら


『ガイコツになりたかったぼく』(2005年)ウルフ・スタルク作 

 菱木晃子訳 はたこうしろう絵 小峰書店

今日の一冊は、読書が苦手な子でも、さくっと読める短編。

小学生高学年でももちろん読めるのだけれど、2編目のセクシーな書店員のお姉さんへの淡い恋心なんかは、中学生からのほうが共感できそう。

ウルフ・スタルクは、スウェーデンの人気現代児童文学作家で、ユーモラスな中にちょっと悲哀漂うのが特徴的。悲劇に酔っているわけでもなく、でもちょっぴり胸が痛むのは思春期ならではなのかなあ、と。読書が苦手でお馴染みの(笑)うちの中1男子も「うん、結構面白い」と言っておりました。

①ガイコツになりたかったぼく

8歳のスタルク少年が、兄さんたちから仲間はずれにされ、「〈ほら穴〉(階段下)の中に黄金がある」と騙されて置いてきぼりを食らう、兄弟あるある。それを信じるほどバカじゃないから、このままここでガイコツになってやるーって(笑)。あ、なんか似たような経験私もしたな。

でもねえ、スタルク少年は本当に見てしまうんです。現実?幻覚?夢?

あとがきによると、この〈ほら穴〉でのエピソードは、スタルクの空想の源なんですって。講演会でのスタルク氏の言葉がよいんだなあ。

「空想には空想の真実があり、それは人生をより楽しくさせるもの。人生の意味は、音楽や文学や空想の力を借りて、だれもが自分自身で見つけていくもの」(P.71)​

②スカートの短いお姉さん

こちらは以前ご紹介した『ウソつきの天才』(そのときのレビューはコチラをクリック)にも出てきた、書店員のお姉さんとの交流のエピソード。

全然文学に興味のなかった少年が、いかにして文学の世界に入っていくか。きれいでセクシーなお姉さん重要(笑)。『ウソつきの天才』と同じ頃だと思うので、多分14歳かな。

入り口となったお姉さんも素敵なのだけれど、学校の先生もまた素晴らしいのです。才能に気づけるかどうかって、凡人には無理なんですよね。だから、たくさんの天才たちは変人だと思われてた。スタルク少年の作った詩を聞いて、お母さんは涙を流すのですが、これが感動ではなく、心配の涙だった。「心理カウンセラーに相談したほうがよさそうね」って(笑)。

ところが、学校の先生は、最高点をくれるのです。「あなたの作文、絵画的」と称賛して。もし、ここで先生に認められていなかったら、スタルク少年は書くことをやめてしまっていたかもしれない。そう思うと本当に人との出会いが、才能を開花させるのだなあ、って思います。

スタルクのこの自伝的短編シリーズはあと2冊(『恋のダンスステップ』『二回目のキス』)あるので、読むのが楽しみです。

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