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中学年からの読みやすいファンタジー


『とび丸竜の案内人 時間をとんだ竜と女の子の冒険』(1988年)  柏葉幸子作 児島なおみ絵 偕成社

今月は、龍(東洋系)と竜(西洋系)ものをたくさんお届けする予定。というわけで、今日中学年から本が苦手な子でも楽しめそうな二冊をご紹介。

まずは楽しいファンタジーをお得意とする柏葉幸子さんのコチラ。

食いしん坊さんにはたまらないかもしれません。だって、竜の世界では、星は金平糖でできていて、月はパンケーキ。そして、季節ごとに変わる太陽は、使われないときは太陽倉というところで、シロップ漬けになっているんです。春は菜の花のみつ、夏は桃のシロップ、秋はマルメ(おそらく西洋かりんのこと)の汁に、冬はハッカ液。

そんな美味しそうな竜の世界から、失われた〈秋の太陽〉をさがしに竜がやってくるのですが、なんでも人間の案内人と一緒でなくては竜の世界を飛び出ることができないんだとか。そして、案内人の条件は、食い意地が張ってること。私も選ばれそうだな(笑)。時空を超えて旅をする、ユーモアたっぷりの物語。

柏葉さんって、空想の達人なんでしょうね。きっと頭の中は、いつも楽しい発想、そこから発展する物語で渦巻いているに違いありません。

個人的には、テンションがちょっと合わず(小声)、子どものときに出会っていたら、もっと純粋に楽しめただろうなあ、と思うタイプの物語でした。

『菜の子ちゃんと龍の子』(2015年)富安陽子作 YUJI絵 

福音館書店

もう一冊は、日本のふしぎを物語にするのがお得意な、富安陽子さんの物語。

個人的には、前述の『とび丸竜の案内人』よりも、読みやすかったです。というのは、個人の頭の中にある空想物語というより、実際にある場所や伝説を元に、想像を膨らませて書いているからかもしれません。こういうこと、あるかもしれないな、というワクワク。

主人公のトキ子以外誰も覚えていない転校生、山田菜の子ちゃん。彼女に急かされるようにして、トキ子は秋祭りの夜、一匹の乗り遅れた龍の子が空に登るのを助ける物語。情景が目に浮かびあがります。

最後に作者解説がついていて、着想を得た村のことが書いてあります。奈良県天川村洞川。役行者に使えた、後鬼の子孫たちが暮す里なんだそうです。高学年、中高生向きの膨らませたバージョンも出てくれたらなあ。こういう日本ならではの物語は、どんどん生まれてほしいなあ、と思う今日この頃です。

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