ツッコミ入れたくなる古典名作
『二年間の休暇』(1968年)ジュール・ベルヌ作 朝倉剛訳
福音館書店
夏休み終わりにご紹介するのは、コチラ!
昔『十五少年漂流記』として、抄訳で出ていた古典名作、あるときから原題に忠実な『二年間の休暇』に変わっていきました。
実は、まだ読んだことなかったんですよね。冒険もの苦手だったので。
うん、教訓めいたとこも多いものの、確かに古典名作と呼ばれるものは、一読の価値アリで面白い!
家に昔からあったのは、福音館のハードカバー版でしたが、今回は、持ち歩きに便利な岩波少年文庫版で読んでみました。コチラ↓
(2012年)私市保彦訳 岩波書店
岩波のほうの挿絵は、原書と同じ。福音館書店のほうは、太田大八さん。どちらの挿絵も捨てがたいのですが、個人的には太田大八さんのほうが好みでした。表紙も。
でもね・・・お~いっ!てことをこの先書くので、この物語大好きな方は、ここから先は読まないで下さいね~。注意しましたからね(笑)。まずは、あらすじをどうぞ↓
《『二年間の休暇』あらすじ》
休暇で、6週間スクーナー船スルギ号に乗って、ニュージーランドの沿岸を一周する予定だった寄宿学校の十五人の生徒たち。ところが事故で船が流され,子どもたちだけで嵐の果てに無人島に漂着してしまう。 年齢もさまざま。イギリス人が多いものの、リーダー格になる子はアメリカ人やフランス人で、少年たちは、ときに反目し合いながらも、力を合わせ、島での生活を切り開いていく。釣りや猟をし、湾や川や森に名前をつけ、住まいやいかだをつくり……そんな中、新たな漂着者が現れ・・・。
いや、純粋にワクワクするんですよ、するんですよ。でも・・・。
そんなに上手くいく~!?と思わずツッコミ入れたくなるんです。
■ ツッコミ①:不安ほぼなしのワクワク
嫉妬から仲間割れなどもありますが、基本みなあっけらかんと楽しんでる感じがスゴイ。
こんなにもホームシック感じないもの?一応不安とか書かれているものの、それをはるかに上回るワクワク感。
子どもなのでね、そこも楽しめちゃうっていうのも分かるんです。でも、不安って波のように押し寄せては引き返したりしないのかなあ?そこの乗り越え方、書かれていないのが現実味に欠けちゃう。
■ ツッコミ②:フル装備
必要なものは全部一緒に流されてきてるんです。食料も、ボートも何もかも。だから、すぐにでも生活できちゃう。うん、これならラクよねえ。サバイバルというより、子どもキャンプだもの。
そして、なんといっても銃があるのが大きい。弾丸も豊富にあってね。狩りにも困らないし、狩りの腕前も最初からすごい。
■ ツッコミ③:なんて人に優しい自然環境
住みやすく、掘りやすくて規模を大きくしやすい洞窟。砂糖など、必要なものは何でも提供してくれる自然。つ、都合よすぎないか・・・?たまに危険動物もいるけれど、毎日ヒヤヒヤ過ごすわけでもない。
こんな過ごしやすい島なら、とっくに入植者がいてもよさそうなもんだ。
■ ツッコミ④:有能すぎる子どもたち
知恵と工夫・・・なんだけれど、みんな最初から有能すぎー!フル装備そろってるのも大きいけれど、頭の中の知識って、そんなに簡単に実践できちゃうもの?都会っ子たちなのに?さらに、自分たちで時間割決めて勉強したり、生活リズム完璧君たち。
■ ツッコミ⑤:正当防衛とはいえ
ネタバレ注意!
最後に大人の侵略者と、やるかやられるかの闘いになり、子どもが勝利します。正当防衛とはいえ、人を殺してしまっているんですよー?なのに、そのことに対する葛藤が一切描かれておらず、帰国後英雄談として、講演して周れるところに違和感。
■ 文明VSネイティブの知恵
古典名作は、いろんな物語の元になっていたりするので、やはり一読の価値はあるんだと思います。
でもね、彼らが生き残れたのは、銃などをはじめ、文明の利器をかなりたくさん持ち込んでいたから。それらが尽きたとき、果たして生き残れたかどうか。
それを思うとネイティブの人たちの生きる知恵はすごいです。実践的。
『青いイルカの島』(紹介記事はコチラをクリック)は実話が元になっていますが、もし自分が漂着するなら、こちらの本のほうが断然参考になるかな。こちらは、こちらでツッコミどころ満載でしたが。
なーんて、つらつら毒を吐きましたが、私が子どもの頃一番好きだったアニメは、家族で無人島に漂着する『南の島のフローネ』。いま見たらツッコミどころ満載なのかな。
大人になってから読んだから、ツッコミ入れたくなるのかもしれません。子ども時代に読んでおけばよかったな。