大人も試される
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『トトの勇気』(2006年)アンナ・ガヴァルダ作 藤本泉訳
小林ゆき子絵 鈴木出版
今日の一冊は、児童文学の少ないフランスから、どうしても学校に興味を持てない男の子のお話です。原題は“35 kilos d’espoir”、主人公の男の子の体重が35キロなのですが、35キロ分の希望という意味。人は誰しも自分の重み分の希望を既に持っている、と訳者の藤本さんはあとがきに書いています。これは挫折と勇気と希望の物語。
【『トトの勇気』あらすじ】
13歳になる少年グレゴワール(通称トト)は、注意欠陥障で、学校が大っ嫌い。幸せだったのは、マリー先生とものづくりをひたすらできた幼稚園の一年だけ。二度の留年に退学。自分が本当にやりたいことに向き合ったトトは勇気を出していく。
小学校中学年から。
■ 試される大人の勇気
トトはユニークな子。勉強はちんぷんかんぷんだけれど、物づくりは好きなのです。こうやって、本で読むとトトの気持ちがよく分かり、そりゃ学校つまんないよね、と思えるのですが・・・。実際にもし自分がトトの親だったらどうでしょう?
のらりくらりと嫌なことが過ぎ去るのを待っているだけ、時間が過ぎるのをただただ待っているだけ、のように見えるトトに苛立つでしょう。ええ、猛烈に。努力しないことに、トトの両親と同じく叫んでしまうかも。いつ、本気出すんだ!!と。
もちろん、本人が変わるしかないのですが、でも周りの大人の勇気も試されるなあとおもったのです。学校という選択をやめる勇気・・・。
これね、よその子だったら簡単なんです。学校だけが人生じゃないよ、とか言えちゃう。でも、我が子となると、もう少し頑張れるんじゃない?ここで頑張れなければどこへ行ってもダメなんじゃない?逃げることは本当にその子にとっていいのか?努力も必要なんじゃないか?なんて考えちゃうんです。
トトの場合は、自分で自分に合う学校を見つけた。でも、家からは通えない学校。お金もかかる。親の勇気、覚悟も試されます。教育は大事といいながら、私立など公立以上に払うお金にはしぶる大人・・・親の価値観の範囲内でやってもらいたいんだなあ。
■ 全ては幸せになるために!
トトの両親は不仲ですが、救いなのはおじいちゃんがトトの良き理解者であるということ。トトには才能があると、ずっとかばってきてくれたのです。
けれど、そんなおじいちゃんも二度目の留年&退学にはブチ切れるのです。ここが、人間らしくていい。僕はバカだから、と開き直るトトに対して、怒鳴るのです。
あーあ、ついにおじいちゃんまで・・・と思うのですが、おじいちゃんの叱り方には愛がある。
不幸になるのは、幸福になるより、簡単なんだ!というおじいちゃん。
そして、簡単な道を選ぶ人間はきらいだ。泣きごとばかり言ってるやつも、きらいだ!と。
だから、幸せになるために、やらなきゃいけないことを、やれ!と本気でぶつかるおじいちゃん。
おじいちゃんは、厳しい言葉は投げつけますが、自分の価値観の押しつけともちょっと違うのです。親の考える幸せになるための努力じゃなくていい、だけど、自分が幸せになるための努力はあきらめてはいけないんですね。誰のための幸せか、ここ重要です。
どうしていいか分からなくなった、トトがおじいちゃんの仕事台に彫り付けた言葉は、胸がしめつけられます。
本人の勇気も必要だけれど、その勇気を後押しできるような周りの大人の理解も必要。
考えさせられました。