加害者にならない自信ある?
『転校生レンカ』B・ジェレーズニコフ作
松谷さやか・中込光子訳 福音館書店
4月は転校生の季節ですね。
というわけで、今日の一冊はロシアの物語『転校生レンカ』。
舞台がロシアなので、名前の一つ一つに馴染みがなくて、途中、ん?これ誰だっけ?と私くらいの年齢になるとなっちゃうのだけれど・・・内容的には全世界共通するイジメがテーマで、とても読みやすいです。
絶版なので、ぜひ図書館or中古本で。学校図書室にいかがでしょう?
《『転校生レンカ』あらすじ》
祖父の住む町に越してきた少女レンカは、転校先のクラスで、思いがけない“いじめ”の嵐に巻き込まれる。愛する少年ジームカの身代わりとなり、ひたすら“いじめ”に耐えるレンカ。少女の一途な信頼を裏切るジームカ。…絶望の淵から逞しく蘇る愛と成長の物語。
小学校上級以上。(BOOKデータベースより転載)
レンカの祖父、ニコライ老人は変わり者。祖先の描いた絵への愛着(執着?)がすごくて、他人の手に渡ってしまった先祖の肖像画を買い戻すために、全財産をつぎこみ、自分はボロボロのコートで過す。そのため、子どもたちからつぎはぎじいさん、と揶揄されています。
そんな祖父に引き取られてきた少女レンカが、ある日すんごい剣幕で帰宅するのです。
「もうこんな町出て行く!!!」と。
そのレンカが受けた仕打ちときたら、まあヒドイもの。クラスメートから総シカトのみならず、レンカを模したかかしを火で焼かれたり、それは壮絶なんです。
壮絶なのだけれど、暗いのともちょっと違う。だって、レンカの怒りのエネルギーがすごい!怒ってる姿は美しくさえある。ぐいぐい読み進められます。
このレンカって子はね、なんていうんでしょう?純粋すぎて、他の子からは理解しがたいというか・・・空気も読めないタイプなので、まあいじめられるのも分かる気がします(だからといって、いじめていいわけでは、もちろんナイ)。
ニコライ老人が、彼女の中にあるとっても高潔な精神と純粋な心を見いだせたのは救いでした。
しかし、ここで、こわいのは集団心理。
いじめの主導になってる子はね、ある意味納得できるのです。良いか悪いかは別として、裏表はない。彼女なりの正義と彼女なりのルールに基づいて、裁いていてる。だから、真っすぐ、信念があるという点において、この子とレンカは友だちになれそうな気すらするのです。
一方で、やりすぎなんじゃないか、本当は違うんじゃないか、と思ってるのに流されて、イジメに加わってしまう、その他大勢がコワイ。
一人一人は悪い子じゃないのに、集団になると恐ろしいことを平気でしてしまう。のちに、真犯人が明かされると、あっさりそっちのイジメに走る。でも、レンカはそれには乗らないんです。
この物語はドキッとさせられます。
だって、自分があの場にいたら一人だけ同調せずにいられたか・・・正直、自信がナイ。
いじめてた子たちを非難する資格なんて自分にはないなあ、って思うのです。
レンカがかばっていた少年ジームカだって、クズ!!!だけれど、自分が彼の立場だったら?・・・やはり、同じようにならない自信はナイ。
発表された当時は、センセーショナルな内容だったらしく、顔をしかめる大人が多かったそう。が、この物語を支持したのは子どもたち。周りでも似たような話がある、って。
最後のニコライ老人の決意は素晴らしく、とても清々しいラストです!