楽しんで生きるが扉を開く!
『バドの扉がひらくとき』(2003年)
クリストファー・ポール・カーティス作 前沢明枝訳 徳間書店
BUD, NOT BUDDY,1999 by Christopher Paul Curtis
前回の児童文学ピクニックのテーマは“お引越し”だったのですが、引っ越しって、基本大人の都合に子どもが振り回されるもの。
ところが、ごく少数ではあるけれど、自らお引越しを選ぶ子どもたちもいるんだなあ。そんなうちの一人が今日の一冊の主人公バド。
自分の住むところ、居場所は自分で見つける!暗い時代が背景なのに、なんとも明るくて楽しいお話に、こちらの気分もニコニコになります。
《『バドの扉がひらくとき』あらすじ》
バドが六つのときにママが死んだ。十歳になったある日、バドはひとりで、まだ見ぬお父さんをさがしにでかけることにした。手がかりは、ママが残してくれた、ジャズバンドの水色のチラシだけ。「ここにのっている写真の人がお父さんにちがいない。じゃなかったら、ママがこのちらしを何度も見たり取っておいたりするはずがない!」一九三〇年代の大恐慌のまっただなか、黒人差別のはげしいミシガン州フリントを舞台に、もちまえの明るさと知恵で困難を乗りこえていく黒人少年のすがたをユーモアあふれる語り口で描いた、感動的なヒューマンコメディー。アメリカでもっとも権威あるニューベリー賞受賞作。
小学校中・高学年~。(BOOKデータベースより転載)
バドが里親の家で受けた仕打ちと来たら!もうね~、歯ぎしりするくらいヒドイもの。
でもね、このバドがくったくないんだなあ。なんていうんでしょう?
「どうせなら、楽しく生きてやるっ!」
っていう明るさの底力を見せてくれるというか。全体に流れるユーモラスな雰囲気に救われる物語です。ウジウジしてる人、ぜひ読んで~(笑)。
例えばね、バドは「バド・コールドウェルの、うまくうそをつきながら楽しく生きる知恵」という独自の決まりを作って番号をつけてるのですが、これがおっかしいの。例えば・・・
「バドの知恵・第三番
うそをつくときは、できるだけかんたんで、おぼえやすいうそにすること。」(P.15)
こんな感じ。
バドを見ているとね、やっぱり楽しく生きていると、道って切り開けていくんだなあ、って思います。
日本版の表紙は、アフリカ関連の絵本でおなじみの沢田としきさんによるもの。
ちなみに原書の表紙はいくつかあるけど、こんな感じ↓
バドの人生、ちょっと、できすぎ(運がよすぎ)てるのでは?と感じないこともない。でもね、この物語には、やっぱりこうあってほしいのです。うそくさいのとはちょっと違う。これ、悲劇で終わってたら、子どもは裏切られたって感じると思う。
帯に「人間への信頼感にみちた作品」とあるのですが、その通りなの!児童文学には、根底に人間への信頼があってほしい。
ジャズバンドも素敵で、‟私も楽しく生きよっ♪”って思わせてくれる、力をくれる物語です。