グリーンブックを見たら……
やっと話題の映画『グリーンブック』を観てきました!
とーってもよかったです。グリーンブックとは、Wikipediaの言葉を借りると、人種隔離政策時代に自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行されていた旅行ガイドブックのこと。
黒人の天才ピアニスト、ドン・シャーリーとそのドライバー(イタリア系白人)が差別の激しい1960年代のアメリカ南部を演奏旅行することで友情を育む物語。事実と異なる部分もあるようですが、実話に基づいて作られた映画なんだそう。
ドライバー兼用心棒のトニー・リップは腕っぷしがめっぽう強い。当初は人種差別主義者でしたが、仕事を失い、やむをえなく、黒人の雇い主の元へ。でも、そんな彼、家族からすごく愛されているんです。だから、本質的には愛が何かを分かる人だったんでしょうね。彼は自分の気持ちにウソのない人だった。雇い主に変に同情するでもなく、人間としての対等な付き合いが、見ていて気持ちのよい映画でした!
で、映画を見終わった後、読み返したくなったのが、今日の一冊です。
『秘密の道をぬけて』(2004年)ロニー・ショッター作
千葉茂樹訳 あすなろ書房
アメリカ人ではない私たちにとって、アメリカにおける黒人の人たちの歴史は身近ではない。けれど、もし自分があの時代あそこにいたら、人としてどうしていたか。
『秘密の道をぬけて』は、平易な言葉で書かれていて、小学生でも読める内容です。でも、大人も読みたい内容。舞台は、19世紀、奴隷制が認められていたアメリカ南部。その南部から、奴隷制が廃止されていた北部やカナダへの逃亡を手助けしていた秘密組織〈地下鉄道〉として、奴隷逃亡を助けた一家の物語です。
命の危険を伴う仕事なので、家族間とはいえども秘密。でも、あるとき10歳の主人公アマンダは偶然夜目を覚まし、両親の秘密を知ってしまうんですね。そこからの、彼女の勇気がすごかった!!!
お恥ずかしながら、私はこの本を読むまで、この〈地下鉄道〉の存在を知りませんでした(Wikipediaにも載っています)。いや、聞いたことはあったのかもしれないけれど、記憶に残ってなかった。この〈地下鉄道〉、10万人もの逃亡奴隷を救っているんですね。
狂った極限状態の中での、一筋の光。人としてどう生きたいのか。
この物語も、『グリーンブック』同様、読んでいて気持ちがよかったのは、人として対等に付き合っていたから。勘違いの、上から目線の同情じゃないんです。もっとも、上から目線の同情からでは、自分の命を危険にさらしてまで、手を差し伸べることはできないんですけどね。私自身だったら、できたかな……?正直、罪悪感にさいなまされながらも傍観していたように思います。だからこそ、こういう歴史から目をそらしたくない。
最後は、あたたかい気持ちにあれる良書です。
そんなつらい時代も、幸いにも終わりが来ます。でもね、社会制度的には終わっても、個人レベルでの差別は根強く残る。それを爽やかな友情の中に描いた、こちらのがこちら。
『ジェミーと走る夏』(エイドリアン・フォゲリン作 千葉茂樹訳 ポプラ社)
併せておすすめです!同じく千葉茂樹さんの訳です。レビューは以前コチラに書きました。
どちらも、出会えてよかったと思える物語ですので、ぜひ!