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人には物語が必要

『診療室にきた赤ずきん -物語療法の世界-』(2004年)

 大平健著 新潮文庫

今日の一冊は、絵本翻訳家のお友だちから教えてもらった本。

精神科医の先生が、書かれたもので、昔話を例えに使って話すと、ストンと患者さんの心に収まることを発見したんですって。

深層心理の分析というよりも、こんな症例の人にはこんな物語があっていた、というような例がたくさん書かれているので、とても、読みやすいです。物語療法の入り口にピッタリの一冊。

例えで話された物語としては、ねむりひめ、三ねんねたろう、幸運なハンス、食わず女房などなど。

机の上に置いておいたら、ホームステイに来ていた里子ちゃん(高3)も勝手に読み始めて、一気読みしていました。

告白しますと、子どもの本の奥深さを知る前、私昔話をなめていました。昔話は幼児のもの=子どもっぽい、と思ってたんですね。でも、小学校のとき、繰り返し繰り返し夢中になって読んだのはグリム童話だったし、昔話の魅力って何なんだろうな、っていう思いはどこかにあったのかもしれません。

そんなとき、思い出したのが、以前もご紹介したコチラ(そのときのレビューはコチラをクリック)。

昔聞いたから、懐かしい。童心の、あの頃の自分に戻れるとか、そういうレベルじゃない。一度も聞いたことがなかった、刑務所や少年院の人たちの心までも癒していってしまうのです!

こ・れ・は、すごい!!!

衝撃でした。

ここから、私は臨床心理学者の故河合隼雄さんや昔話大学の小澤俊夫さんへと興味がつながっていったのですが、今日ご紹介している一冊は、より一般の人にも興味を持ってもらえそうな内容です。

残念ながら、Kindle版しか売っていないようなので、図書館か中古で。文庫本サイズなので、電車の中でさらっと読むのにもおすすめです。

人には物語が必要なんだ!と、物語の力を痛感させられたのももちろんなのですが、何よりもこの著者の先生の、患者さんに対するあたたかいまなざしに、療法と言うよりも、寄り添う気持ちに、なんだかこちらまで気持ちがあたたくなりました。

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