うそつきは作家のはじまり!?
『うそつきの天才』(1996年)ウルフ・スタルク作 菱木晃子訳
小峰書店
今日の一冊は、とおっても素敵な活動をされている、子どもと見る風景 kodomiruさんから教えてもらったコチラ!
スウェーデンを代表する現代作家、ウルフ・スタルクの短編二編を収めたもの。
ああ、これが!NHKラジオ講座『大人のためのスウェーデン文学』の中で菱木さんが話していた、スウェーデン本国でも未発表だったと話されていた短編は、これだったのですね。
どちらもスタルク自身の思い出が元になっているのですが、クスクス笑えて、ちょっと考えさせられます、大人は。
「うそつきの天才」
は、13歳のときのぼく。本当は落第点だらけの落ちこぼれなのだけれど、ぼくのことを優等生だと信じている両親。うまくうそをつきまくっているうちに、収拾がつかなくなって、家出してしまうお話です。本人はもう水に飛び込むしかない、とか真剣だし、一応追い詰められてはいるのだけれど、どこかユーモラスで悲壮感がないんだなあ。
「シェークvs.バナナ・スプリット」
は、そんなうそつきの天才だったぼくが14歳になって、作文の才能が開花する話。
人生はじめてのニキビができて、ぼくは急に考えるということを始めるのです。そして、恋をした本屋さんの女の人に導かれて、文学の世界へ。ほーう、そういう風につながるのか!
ふむ。本が読まない子が読むきっかけを作るには、美人さんに活躍してもらうとよいのかも(笑)。
これら二つの短編は、その子らしさを押さえこむことをしなければ、人はいつしか突然花開くんだなあ、って教えてくれます。
でも、大人は正そうとするでしょう?うそはいけないことだし、このままだとこの子ダメになる、って。
本当にね、大人がすべきことは「待つこと」なんだな、って。
大丈夫、どんな子もちゃんと自分で成長するから。時期は人それぞれだけれど、開花するんだな、忘れがちだけど。オザケンパパこと小澤俊夫氏大絶賛の、怠け者のメッセージも思い出しました。(その記事はコチラをクリック)。
思い出すなあ。私が小学校1年生だったとき、クラスに7人兄弟だという女の子がいたんです。7人兄弟なんて物語の世界みたい!と私は興奮してしまって(多分相当目をキラキラさせてた 笑)、その子に兄弟のこと色々聞いたら、その子もノリノリで話してくれて。
楽しかったなあ。で、あるとき授業参観で母が「お子さん多くて大変ですねえ」とその子の親に話しかけたら、実際は一人っ子だったってことが判明。
でもね、彼女は決してウソつきなんかじゃなかった、私にとっては。彼女の話にはワクワクした!だから、私たち二人の間にはその兄弟たちは存在してた。素敵な思い出なんです。
一年でその学校は私は転校してしまったので、その後の彼女の子とは知らないけれど、今ごろ作家になってたりして。
うそつきは、作家のはじまりはじまり・・・かも。