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ほら、アナタも走りたくなる!?

『3つ数えて走り出せ』(2017年)エリック・ペッサン著 平岡敦訳 あすなろ書房

Aussi loin que possible, by Eric Pessan, 2015

走って走って、ひたすら走る物語 from フランス。

これは、ロードムービーにしてもらいたいなあ。

舞台は日本でも、どの国でも成立する物語だと思うの。

すごくドラマチックに描いてるわけじゃない友情物語なんだけれども、変にセンチメンタルじゃない。主人公の一人称語りで、どちらかというと淡々と進みます。

読みやすいし、閉塞感を感じている子&大人の背中をちょっと押してくれる物語かも。

なぜ、背中を押してくれるかって?

だって、主人公は平凡でヒーロー的でも何でもない。

現状を打破する方法だって、特別なことじゃない。

だって、走ることって、身一つあればできること。

(まあ、昔から運動会は万年ビリの私は走るという選択はしないけれど 笑)

ありふれた月曜日、トニーとアントワーヌは何の計画もなく、学校に行く代わりに走り始めるのです。何のために走っているのかも、ゴールもワカラナイまま・・・。

ただ、ただ走って1週間で380キロ!

何がいいって、意味は後付けなのです。

分からなくたっていい。とにかく一歩踏み出す。それが、自分たちの突破口になろうとは、走りはじめた時点では、この二人にも想像もつかなかった。

・・・今朝、トニーと走り始めたときから、ぼくにはもう、過去も未来もなくなった。大事なのはいま、この瞬間だけ。それを思いきり生きればいい。(P.46)

ちなみに原書の表紙はこんな感じ。

実はアントワーヌは父親から虐待を、トニーはウクライナからの移民で国外退去の危機にあるんです。でも、それを何とかしてやろう、っていう気持ちで走り始めたわけじゃなかった。でも、走り始めたら、限界まで挑戦したくなったんですね。

走って「いま、ここ」を実感するうちに、いままであとのことばかり心配して、目の前の一瞬をずっとないがしろにしてきたことに気付くアントワーヌ。

アントワーヌは自分たちは野生動物だ、って言うのですが、走るって、原始の感覚。

いまの私たちは頭で考えすぎ、身体が置いてきぼりなのかもしれない。

体はぼくにたくさんのものをくれた。呼吸は賜物、前進は奇跡だ。・・・中略・・・生まれてこのかた、こんなに疲れたことはなかった。そして、これほど喜びにあふれたことも。

生きているという実感が、胸に激しく湧きあがった。(P.62)

なんだか・・・あれ!?運動音痴の私でも、走りたくなってきちゃう(笑)。

そして、アントワーヌは自由を感じるのです!

大事なのはいま、波にむかって駈け下りていくこの瞬間だけ。今日サボったどんな授業より、踏みつける砂の感触こそが本物だ。(P.63)

そう、大事なのは目的地じゃないんです。走る“意味”でもナイ。

いま、この瞬間を味わうこと。

でも、いつかは終わりは来る。

さて、彼らはどのように彼らの冒険を「行きて帰りし物語」にするのでしょう?

美談に仕立てたがる大人を上手く利用して、思いついたアイディアとは?

読みやすいので、本が苦手な子でもおすすめです。小学校高学年から。

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