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本に囲まれてるだけでいい


昨日、駆け込みで映画『マイ・ブックショップ』を観てきました!

観たのは逗子のシネマアミーゴという小さいけれど心地良い空間。三男が入学して送迎がなくなり、運動不足だったので、運動がてら片道40分ママチャリ漕いで行ってきました~。

《『マイ・ブックショップ』あらすじ》

舞台は1959年のイギリス。ある海岸地方の町。戦争で夫を亡くした女性フローレンスが、書店が1軒もなかった町で、夫との夢だった書店を開業しようとする。 女性の開業がまだ一般的ではなかった保守的な地方の町で、フローレンスの行動は住民たちに冷淡に迎えられる。ある日、彼女は、40年以上も邸宅に引きこもり、ただ本を読むだけの毎日を過ごしていた老紳士と出会う。フローレンスは、読書の情熱を共有するその老紳士に支えられ、書店を軌道に乗せるのだが、彼女をよく思わない地元の有力者夫人は書店をつぶそうと画策する………

自然の中に溶け込んだイギリスの古い町並みと海辺の風景が、とにかく美しい!

そして、カラフルな背表紙や、美しいカリグラフィーのポップの並んだセンスのよい書店は、見ているだけでワクワクします!

ああ、なんで海外の書店の書棚ってあんなに美しいんでしょうね?そんなワクワクする書店、街ぐるみで本の魅力を伝えようとしているところを集めた、こちらのビジュアルブックもおすすめです。

さて、映画に話を戻すと、映像美が素晴らしく、とにかく見ているだけでウットリな映画でした。

でもね、内容のほうは、後味が良いかと問われれば、私は既に児童文学体質(=幸福体質、希望体質)になってしまっているんですね(笑)。あの希望のなさが……ね。ある程度の爽快感は最後に用意はされているのですが、それでも、理不尽さのほうが私は印象に残ってしまった。

田舎特有の表と裏のある人間関係や、上流階級のプライドから目立つ人を上品なやり方で、ほほえみと共に潰そうとする様には、もうね、歯ぎしりする思い。主人公フローレンスをやりこめようとする地元有力者ガマート夫人は、まあ本当に腹黒い人なのですが、こんな美しい老人いるんだというくらい凛として美しくて魅了されます。彼女は、表向きはフローレンスが買ったオールドハウスにアートセンターを創りたかった、と言っているのですが、要するに自分以外の誰かが先を越して何かをするのが許せないんですね。でも、教養はあるから表向きは理解を示して、ジワジワとやりこめていく。スマートに。こわいです。人間が一番コワイ。「世の中には滅ぼす者と滅ばされる者がいる」という大人の現実を描いています。

そんな中、この物語の中で、希望の光となる人物が二人いるのですが、そのうちの一人がこの書店を手伝う少女。彼女は、読書は嫌い。でも、この書店の居心地の良さが大好きになり、ここは彼女にとってとても大切な場所になるのです。本に囲まれた空間って、読書をしない人にとっても、不思議と魅了する空間になりえるんですよね。

私自身も活字中毒というほど読書好きなわけでもないし、うちの長男に至っては、活字アレルギーくらい苦手(笑)。それでも、そんな長男もこの少女と同様、書店や図書館、つまり本に囲まれた空間は大好きなんです。中身を読むことがなくても、ですよ?背表紙に囲まれてるだけで、なぜか落ち着くし、ワクワクしてくるんです。

本には、エネルギーがあるんですよね。ただ、そこに積んでおくだけで。中に書かれた人たちの思い、作者の思い、編集者の思い、出版社の思い、その本の良さを伝えたいと思う人の思い、色んな人の思い、つまりエネルギーが乗っかっているのが本なんだなあ。そして、やっぱり希望を伝えようとするエネルギーに満ち溢れた児童文学が私は好き。

本の中身はもちろんのこと、誰かが自分のために本を選んでくれる幸せ、本に囲まれた空間そのものの魅力が伝わってくる映画でした。

イギリスの風景、書店好きにはたまらない映画だと思います。

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