少年院と読書活動
「JBBY(国際児童図書評議会)希望プロジェクト」困難を抱える子どもたちと本の役割という学びの会に参加してきました。
今回のテーマは、「少年院・少年鑑別所における読書に関する取組みについて」。
講師は、元法務教官であった日置将之氏(大阪府立中央図書館資料情報化総括主査、日本図書館研究会研究委員長、矯正と図書館サービス連絡会事務局長)でした。
普段のぞくことのできない世界。おそらく読書なんてしたこともなかったような子たちが、どうやって本と出会っていくのか知りたかったんです。
きっと、あと数時間あったら、もうちょっと具体的な話が聞けたのかな。概要で終わってしまうのは、時間的制約があったので仕方なかったのかもしれません。なんせ、我々、少年院・少年鑑別所がどういう取り組みをしているか、なーんにも知りませんからね。でも、個人的には、もうちょいエピソード的なことが知りたかったなあ。だって、読書って個人体験だから。そして、個人体験を語ることだけが、人の心に響くと実感してるから。
■ 明るいだけは危険?!
興味深かったのは、テレビの影響のお話。少年院では、情報が基本遮断されているんですね。インターネットは見れない、テレビも制限されている。でね、限られたテレビタイムに、当時流行っていた「○ちゃ○ケ」っていうバラエティ番組を見せると、どうもその日の夜は、規律違反が多く起こるんだそう。明るいバラエティで、みなが楽しみにしているようなものなのだけれど、それを見せた日は、なーんかみんなフワフワしちゃうらしい。で、「動物○想○外」っていう番組を見せると、半分くらいが夜勉強を始めるそうです(笑)。
で、思い出したんです。松岡享子さんと松井直さんの対談で、「今は何でもスピードが速くなって、スタッカートのような言葉がとびかっている。そうすると、呼吸が浅くなり、精神の重心があがってくる。そして、物事を受けとめることができなくなる」とあったことを。
テレビバラエティのノンストップのテンションの高い明るさ。でも、暗さも人間には必要なんですよね。町も家の中も明るすぎる、というのは河合隼雄さんも長田弘さんとの対談の中でおっしゃっていました。内省には暗さというか、静かな落ち着いた空間も必要。
■ 読書が非行の防波堤に
環境が人を作る説には、全面的には賛成しないけれど、でも、環境が多大な影響を及ぼすことも確かで。
少年院で、たくさん本を読まされ、たくさん文章を書かされ、ほかにすることが制限されている子どもたちは、たった数か月で、読書週間を身につけていくそうです。読書はおろか、日本語を話すことも、おぼつかないような少年たちだったのに!中には少年院での学びで目覚めて、新聞記者になった子もいるんだとか。奈良少年院(心身に著しい障害がある子たちが入る第3種に区分)では、毎朝20分間朝読書の時間を、日課に組み込んでいるそうなのですが、衆情が安定するんだそうです。
読書は、想像力を育み、短絡的な行動(=非行)の防波堤になる、日置氏はそのような手ごたえを感じたそう。そのために大事で必要なのは、「子どもたちと読書とを繋ぐ大人の存在と、環境の整備」、とおっしゃっていましたが、少年院に限らずそうですよね。スマホからの情報の海におぼれて、自分を見つめ合う機会を失っている子ども&大人たち(←私もそのうちの一人)。
ただただ何でも明るくて、自由でやりたい放題なのがいいわけじゃない。
暗さや制限から生み出されるものにも、目を向けてみたいと思います。