ほ~ら、本と旅したくなる!
『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋』(2018年)
内田洋子著 方丈社
今日の一冊は、児童文学ではありませんが、本好きさんなら気になるであろう興味深い一冊!旅テーマのとき、どうしても紹介したくなった一冊です。
本の魂が生まれた町、モンテレッジォ。イタリアの山奥にあります。びっくりするくらい周りに何もない!本の帯をはずすと、空から移した光景が↓
そんなトスカーナの山奥から、本がイタリア各地に運ばれていくのです。資源的に恵まれなかった貧しい地域。行商人として、村から出て行かなければお金が手にはいらなかった。そんなモンテレッジォの行商人たちが、本を売り歩き、当時、敷居の高かった本の敷居を低くしてくれたんです。
運んだ本は、売れ残りや訳アリ本。そして、顧客も、それまでの読書層とは異なる庶民。モンテレッジォの行商人たちの本への勘の鋭さや情報網といったら、もうすごいんですよ~。
「青天井で本売りを重ねるうちに、行商人たちは庶民の好奇心と懐事情に精通した。客一人ひとりに合った本を見繕って届けるようになっていく、客たちにとって、行商人が持ってくる本は未来の友人だった。」(P.209)
AIとかじゃできないですよ、これ。経験と勘。あっぱれです!
装丁も素敵なんです。ちょっとざらついた紙質にカラーでイタリアの赴きある古書店の写真などが多数掲載。ネットでは味わえない感覚。手元に置きたくなるんですよねえ。
内容は、夢中になって一気読み!というより、
「ほうほう、へーえ。そんな歴史が!モンテレッジォすごい!古書店の魅力すごすぎ!」
と興味深い感じ。ただ、それほど本好きではない夫に読ませたところ、「うーん、別に」だそう(笑)。やはり、本好きさんのための本のようです。
内田洋子さんの洞察ももちろん素晴らしかったのですが、これ物語という形にしてもらって読んでみたいなあ、と思いました。そして、子どもたちにもこんな時代があったこと、本の魅力を伝えたい。誰か物語にして書いてくれないかな。
印象的だったのは、最後に、食堂で出会ったユダヤ系イタリア人の女性の言葉↓
「勉強するのよ」
すべてを失って、生きた証として美しい言葉を財とするよう、母親は娘に諭した。(P.336)
美しい言葉って財なんだなあ、としみじみ。
そして、各紙が書評を出していますが、毎日新聞さんの書評に深く頷きました。
「しかし読後に感じるのは、過ぎた時代への憧憬ではなく、 『本』はこれからも人を照らし続けるという希望ではないか」(5/20 今週の本棚)