あなたの子はあなたの子ではない
『預言者』カリール・ジブラン作 佐久間彪訳 至光社
今日の一冊はコチラ。
船井幸雄訳で、成甲書房版もありますが、至光社のはポケット携帯版。まさに持ち歩きたくなるような本です。
日本ではあまり知られていませんが、作者のジブランは、世界的に有名なレバノンの詩人であり、哲学者であり画家。
『預言者』は、人間の普遍的なテーマ、愛、結婚、自由、子供、友情、家、苦しみ、宗教、仕事、別れ、死などについて語られた散文詩です。
個人的には、詩は苦手な分野なのですが、こちらは魂に響いたなあ。
この中でも、「子供について」という章を先週からずっと思い出していたんです。
というのはですね、長男が先週から家を出まして・・・。
って、家出じゃないです(笑)。中学校の寮に入ったんです。
長男がまだ赤ちゃんの頃、友だちと「中学からはイギリスの寄宿舎に入れるざます。ホホホ」とかって冗談で言ってましたが、本当に寮に入ってしまった(イギリスじゃなく、東京だけど)。そんなわけで、この詩をいまいちどかみしめていたところなのでした。
実は、他の本にあった意訳のほうが好きなのですが、引用頁が不明なので、至光社のほうから引用をご紹介しますね。
あなたの子は、あなたの子ではありません。
自らを保つこと、それが生命の願望。
そこから生まれた息子や娘、それがあなたの子なのです。
あなたを通ってやって来ますが、あなたからではなく、
あなたと一緒にいますが、それでいてあなたのものではないのです。
子供に愛を注ぐがよい。でも考えは別です。
子供には子供の考えがあるからです。
あなたの家に子供の体を住まわせるがよい。でもその魂は別です。
子供の魂は明日の家に住んでいて、あなたは夢のなかにでも、
そこには立ち入れないのです。
子供のようになろうと努めるがよい。
でも、子供をあなたのようにしようとしてはいけません。
なぜなら、生命は後へは戻らず、昨日と一緒に留まってもいません。
あなたは弓です。その弓から、子は生きた矢となって放たれて行きます。
射手は無窮の道程にある的を見ながら、力強くあなたを引きしぼるのです。
かれの矢が速く遠くに飛んで行くために。
あの射手に引きしぼられるとは、何と有難いことではありませんか。
なぜなら、射手が、飛んで行く矢を愛しているなら、
留まっている弓をも愛しているのですから。(P.25-26)
あああ、飛んで行ってしまった・・・。
長男の入学した学校は、私の兄が卒業生なこともあり、子どもと離れることに不安は全くありませんでした。先生、生徒、父母、関わる全ての人たちが愛にあふれていることを知っていたから。
が、まさか自分が寂しくて泣くとは思わなかったなあ。感傷に浸るタイプではないので。
入学式の前夜、布団の中でこの詩と、とある讃美歌(←どちらかというとアンチクリスチャンだけど)を急に思い出して、一人で泣いていたのですが、なんとその讃美歌が入寮式のときに歌われたんです。そこで、涙腺崩壊。
子を思う母の涙のことを歌った、讃美歌510番。
母の涙を春は軒の雨、秋は庭の露、と例えた美しい詞。
いま思えば、母と兄が510番を大好きだったのは、入寮式で歌われたからなんですね。
亡き母がそばにいるような気がして、余計に泣けました。
そんな母の心、子知らず。
水を得た魚のように、長男はごっ機嫌で、ワクワクしながら行ってしまいました。